アイスコーヒー

「いらっしゃいませー!何名様ですか?」


 新しいアイスコーヒーはBLACKで飲むのがおすすめらしいが、僕は甘いコーヒーが好きだ。

あえて新しいタイプは選ばず、

いつもの加糖アイスコーヒーを頼んだ。

銀のカップに入ったクリームを全部入れて、

サービスで付く厚切りの焼き立てパンの香りを堪能しながら、白と黒のマーブル状のコーヒーをストローを使わずに口にふくんだ。


今日は午後からの仕事だ。

スーツを着てネクタイをしめているが、

ただの工場勤めだ。

毎日自分よりずっと年上の派遣さんや、

外国人相手にする仕事は、

かなり心労がたまるものだ。


仕事前の時間にコーヒーを飲みながら、

小説を書く事が自分だけの時間だ。

別に誰に見てもらうわけでもない。

自分の好きな世界観を形にする事で、

自分が自分でいる事を保っているのだ。


瑛人の香水がながれている。

喫茶店にしては珍しく邦楽が流れている。

音楽というのは時々過去を彷彿させる。

ドルチェ&ガッバーナの香りがどんなものか知らないが、2年前に別れた彼女の事を考えてしまった。


 ため息をつきながら店の掛け時計に目をやると10時に入店したから2時間がたっていた。

そろそろ電車の時間だ。

伝票を手に席を立つ事にした。

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