第10話 2020年4月16日 ボックス相場

俺がCFDを20枚以上売った翌日、日経平均株価は急上昇を続け19,000円を突破した。

CFDを今までのような感覚で売ることに恐怖を覚えた俺は、それでも株は必ず下がる、ファンダメンタル的に再度18,000円以下になるとんで、ペースは落としつつも毎日少しずつ売りを続けていた。


売却枚数は40枚、平均売却価格は18,600円としていた。

平均株価が18,000円になればCFD 1枚あたり6万円、全部で240万円の利益が出る。

しかし、現状は逆に360万円以上の含み損を抱えていた。


逃げれるものなら逃げたい気持ちだったが、もはや容易に引き返せないところまで来てしまっていた。

既にダブルインバースで稼ぎ出した利益も目減りしていて100万円ちょっとの利益まで減少しており、いま全てを精算しても200万円以上の損失が出る状態だった。


今週に入って、日経平均株価は19,000円から20,000円の間で方向感のない動きを続けていた。

いわゆるボックス相場というやつだ。

ボックス相場とは上昇トレンドも下降トレンドも発生していない状態で、株価が一定の範囲で上下することを指す。

今の相場では下限が19,000円、上限が19,700円あたりでフラフラと上下を繰り返していた。


俺は最早もはや仕事をする気が起きず、昼間は日経平均株価、夜は日経平均株価先物をひたすら追い続けた。

睡眠時間は削られ、自分でも明らかにやつれているのがわかるようになっていた。

疲労の限界を感じて夜中の1時くらいに寝てもダウや日経平均先物の値動きが気になって、夜中の3時くらいには再び目を覚ましスマホで値動きを追ってしまう。

一度値動きのチャートを追い始めるとダウと大証の日経平均先物がクローズする朝5時半まで眠ることができなくなっていた。


5時半から再度眠りに落ちても8時半には起きて9時にはテレワークを始めなければならない。

いや、もうテレワークなどどうでも良い。

9時からの日経平均を追わなければ、下手をすると財産を全て失いかねない状況だった。


4月16日の朝、平均株価は19,300円台からスタートしたが下げ始めた。

今買い戻せば、損失は280万円で済む。

いや……、もう少し粘れば19,000円以下で買い戻せるかもしれない。

18,900円で買い戻せば、少し損は出るが120万円で済む。

よし、指値さしねを18,900円にしよう。

今日はいけるような気がする。


日経平均はじりじりと値を下げ、19,100円台に突入した。

昨日は瞬間的に400万円の損失が出ていたが、今はもう200万円まで損失が圧縮されている。

もう少し、もう少しで楽になれる。

あと、200円とちょっとだ……。


しかし株価は非情にも反転し、その日の取引は19,300円ちょっとで終了した。

俺の指値は約定やくじょうせず、損失は280万円に逆戻りしていた。

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