ゆりきすのいろいろ

やまめ亥留鹿

茶化してただけだったのに本気になるやつ


 本棚の前に立っていたユウカが、ニヤニヤと振り向いた。

 その手には、本棚の奥に隠していたはずの百合漫画雑誌があった。


「こんなの読んでるの?」


 茶化しモードのユウカが迫ってくる。


「あ、女の子同士でキスしてるじゃん。まさかこんな趣味があったとは」

「べ、別にそんなんじゃ」

「ほんとー? あは、もしかして私のことをそういう目で見てたりして」


 彼女のその言葉に、思わず顔が熱くなる。

 口をつぐむ私をユウカがさらに面白がって、顔を近づけてくる。


「え、まじ? そんな目で見てたの? キスしたいの? していいよ?」


 ニヤニヤしながらユウカが言う。

 こいつは本気じゃない、からかっているだけだ。わかってる。

 こいつのこういうところだけは大大大嫌いだ。


 限りなく近づいていたユウカの唇に、自分の唇を押し当てた。

 熱くて柔らかい感触。

 これっきりになるかもしれない彼女との初めてのキスを、胸の奥でじっくり噛みしめる。


 ユウカが驚いて、後ずさる。

 顔を真っ赤に紅潮させて、右手で口を覆っている。

 ふん、ざまあみろ。


 しばしの沈黙があってから、頬を上気させたままのユウカがまた、距離を詰めてきた。

 鼻先が触れるほどの距離で、彼女が熱っぽく囁く。


「ね、もう一回してみて」


 ユウカの甘ったるい吐息が唇に触れる。

 ユウカのとろけた瞳が私を掴んで離さない。


 『してみて』って言ったクセに、ユウカの方から唇を重ねてきた。

 

 まさかこんな展開になるなんて……ざまあみろ。

 

 

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