異世界に転生した高校生四人組が、魔王を倒し大団円を迎えた瞬間、案内役の精霊に意外な真実を告白されるところから始まる物語。
異世界転生もののファンタジーです。あるいはその雛形なり構文なりを使ったショートショート、と、ストーリーだけを見るならそのようにも読めるお話。でもやっぱり本筋としてはゴリゴリの異世界転生というか、まんまファンタジーだと思います。現実の現代社会ではない、空想上の『ここではないどこか』を組み上げるための作品。
微に入り細を穿つ設定の数々。分量のうちの大半が細かな設定の描写に終始しており、おかげでディティールはすぐに掴めます。平たくいうなら古典的なゲームのような世界。剣と魔法と魔王はいいとして、スキルやステータスというものが普通に存在しており、なにより「こちらの世界」と「元の世界」がはっきり認識されていること。第一話、仔細に並べられた四人のプロフィールは、そのまま物語舞台の説明でもあって、とにかく設定がてんこ盛りでした。
この先はネタバレを含みます。わりと大事なところに触れてしまっているので、未読の方はご注意ください。
お話の筋そのものは至ってシンプル、というか実質的にかなり簡潔なもので、主人公の高校生四人と、もうひとりの友情の物語です。もともとあちら側の存在である案内役の精霊。主人公らを元の世界に帰すための狂言を、でも主人公らは嘘であると看破し、そして再び〝裏面〟の冒険の旅へ、というストーリー。つまりタイトルに偽りなし、終幕の先を描いたお話です。
精霊のついた嘘と、そしてその意図を察しながらも助けに戻ってきた主人公たち。彼らの勇気と友情の大きさが伝わる、堂々とした冒険の物語でした。