第70話 再開
敵将ティレルを討ち倒したあと、そのまま大将クライドとの決戦かと思ったが、グガイン中将にここまでで良いと言われる。
いわく、「手足のない相手にお前を使うまでもない」とのことらしい。
「少しは認められたってことかな?」
「あれでか? まあ手柄全部独り占め、みたいなタイプじゃぁなくて良かったがよ」
俺とアウェンはケルン戦線を離れ、一度リンド城へ戻ることになる。
そこで久しぶりに訓練校のクラスメイトたちと顔を合わせることになった。
「お久しぶりです! 良く無事に戻られました!」
「ああ、メリリア。おかげさまでね」
「ん。大変だったと聞いた。何をしてたか聞きたい」
「サラスも活躍してたらしいな」
二人ともそれぞれの戦場で活躍を見せて少尉になったらしい。
訓練校の人間は幹部候補生。
見習士官の次はいきなり少尉になるのはそうなんだが、ここまでのスピードで何人もというのは異例らしい。
俺の二階級特進というのはもはや異例中の異例ということだった。
「中尉になったそうですね。どうですか? 今の気持ちは」
冗談めかして聞いてくるメリリア。
「実感がない」
そもそもまだ正式なものではなく、口頭で伝えられているだけのものだしな。
「ふふ。でも一体どんなことをしたらこの短期間で中尉に? まあもちろん、あのケルン戦線でしたから生きて帰っただけでも勲章ものかもしれませんが」
「ケルン戦線の噂は常にこちらにも流れてきていた。でもあそこには、敵の大将とその配下の有能な四将がいたと聞いた。どうやって優位な戦況に?」
メリリアとサラスの問いにはアウェンが答えてくれた。
「その四人の将を全員討ち取ったんだよ。こいつが」
「ええっ⁉」
「本気……?」
二人が目を見開いていた。
表情の変化の乏しいサラスですら露骨に驚いていることがわかるほどだった。
「と言っても、戦場で戦ったのは二人だし、片方は完璧にお膳立てされてたしね」
「そもそも戦場ではない場所でどうして……いえ、リルトさんならなんとなくわかるのでいいですが……」
なぜか半ば呆れられるような目でメリリアに見られていた。
「まあこいつはもうめちゃくちゃだったよ」
「いや、アウェンも十分めちゃくちゃやったでしょ。あんな敵地のど真ん中駆け抜ける経験、もうしないと思うよ」
少なくともそう思いたかった。
だって普通なら死ぬから。
姫様の無茶よりほんの少しだけマシだったというだけの話だ。
相手が相手なら流石に持たない。
「そりゃおめえが横にいたからできたんだよ! で、俺たちはしばらくこの城で休めんのか?」
「あら、何も聞いてないのですか?」
メリリアがいたずらに微笑んでそう言う。
「我々は出世頭のリルト中尉のもとで次の戦場を戦うそうですよ?」
「え?」
驚く俺を見て再びメリリアが楽しそうに笑っていた。
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