第65話 初陣
「いよいよだな……」
アウェンが緊張した面持ちで呟く。
「ふむ。あまり硬くなると馬に緊張がうつるぞ」
俺とアウェンの間に入る形で堂々と立つチェブ中尉がそう言う。
その言葉通り、アウェンの馬も鼻息を荒げていた。
「良い馬を用意してもらいましたね」
「それはそうだろう。我々はこのあと、誰よりも先にあの敵陣に風穴を開けねばならんのだから」
中尉の見据える先にはセレスティア公国の大軍。
率いるのは四将の残った二人、ウォーカーとティレル。
「アウェン、見えてる?」
「一人はな」
大軍の最奥で味方を鼓舞しているのがおそらく、ティレルだろう。
ウォーカーは騎馬隊長。もうあの軍の中にいるはずだ。
「姿が見えずともあの騎馬隊の中心にいることは間違いない」
チェブ中尉の言うとおりだった。
要するに俺たちは、敵陣のど真ん中で、セレスティア公国が誇る最強の部隊と言われる騎馬隊と正面からぶつかり合うことになる。
「そろそろだ」
中尉が身をかがめいつでも飛び出せるよう準備を整える。
それに倣って俺とアウェンも準備をしたところで……。
「突撃ぃぃぃいいいいいいい」
「「「うぉおおおおおおおおおおおお」」」
グガイン中将の掛け声とともに一斉に軍が動き出す。
俺たちはその先頭、まずは味方にもみくちゃにされないように駆け抜けるのが仕事だった。
「すごい……」
まだ敵とぶつかってもいないというのにその熱気に当てられる。
まずは俺たちのような騎馬隊がぶつかることになるが、その前に……。
「敵部隊の魔法攻撃を感知! 各自衝撃に備えよ!」
伝令による叫びが届くかどうかといったところで、敵陣から炎の塊のような大魔法が複数放たれる。
「うぉっ⁉」
「大丈夫。このあたりには来ない」
「ああ……」
馬が驚いてバランスを崩しかけたアウェンを支える。
当然こちらにも魔法障壁や迎撃部隊もいるが、それでも今の攻撃で後続の何十人もが吹き飛ばされていた。
だがこちらも負けてはいない。
「いけええぇえええええええ」
極大の氷が敵陣のほぼ中央へ飛び込む。
魔法部隊が生きているうちは陣形など意味をなさないな……。
ここからは正面からのぶつかり合い。
魔法部隊も狙いをお互いの魔法使いたちに絞り始める。
「ぶつかるぞ!」
チェブ中尉の声に身を引き締め、敵騎馬隊とぶつかりあった。
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