第55話 レウィン=ギルターク 回想
「はははは! お前はもう終わりだ!」
ロッステルの勝ち誇った顔。
周囲には幾重にも偽装の魔法を張り巡らせていたというのに、的確に俺の元にたどり着いた人物がいた。
「さっき話してやったであろう?! 絶望するがいい! クライド大将傘下の最強の暗殺者! レウィン様だ!」
「これが例の四人の一人か?」
「そうだ! さあレウィン様! どうかこの不届き者を……へっ⁉」
レウィン=ギルターク。
資料とロッステルやその他の証言から話をまとめると、将でありながらみずからが潜入や暗殺をこなす変わり者ということだが、本当に本人が来たのか……。
いやまあ、偽物かどうかは後で考えればいいか。
と、そんなことを言ってる場合じゃないな。
「それは俺の仕事だぞ?」
「……」
ロッステルの首を片手で持ち上げるレウィンと目を合わせる。
全身を黒い布のようなものでほとんど顔まで覆い隠す細身の……いやもはややつれていると言っても良いほどの細腕ながら、醜く太ったロッステルを持ち上げる光景は確かに、見るものによっては畏怖の対象になるだろう。
「返してもらおうか」
すでに間合いには入っている。
「……⁉」
即座にロッステルを捨てて懐に手を入れるレウィン。
だが……。
「遅い」
一瞬の交錯。
首を切り落とし、一滴の血もこぼさないようマジックアイテムに無理やり突っ込む。
「は……?」
ロッステルには何が起きたかもわからなかった様子だった。
「こいつのおかげで自信満々に情報を吐き出してくれていたわけか」
「ひぃっ……待て! どうだ? 金をやる! 金を……えーっと……」
バタバタと慌てふためくロッステル。
隙だらけの背中から、転倒したように見える位置に致命傷を負わせた。
「あとはここのことを大々的に喧伝して……このメイドは主人の死を見たショックで田舎に帰ったって設定にして……さっきのレウィンの偽装工作か」
探していたターゲットがこんな形で懐に飛び込んできたのは運が良かった。
おそらくレウィンというのも、俺がここに誘い出したことも、この部屋に何が仕掛けられていたのかも理解していなかったんだろう。
優秀だったからこそ誘い込まれたといえる。
だがこのくらいの相手ならまあ……帰るまでにあと一人くらいいけるだろうな。
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