第33話戦略訓練⑥【ギーク視点】→【リルト視点】
◇ギーク視点
「ちっ……どこだ!? 魔法使い部隊は……!」
斥候をあれだけ放ったというのに帰ってきたのは一割にも満たない。それに得られた情報は空振りの連絡だけ。
「おかしい……やつめ……なにをしたんだ!?」
索敵の成功率は仕方ないにしても、一割しか帰ってこないのは異常だ。
「まさか……」
こちらの動きを読まれているのか?
対して俺が見つけられたのはわずかに三班のみ。これだけしか斥候を放っていないとは考えにくい。
「くそ……だったら読み合いではなく兵力をぶつけ合うだけだ」
相手の準備が整う前に一気に畳み掛ける。
進軍ルートは安全だ。仮に魔法使いが何か仕掛けてくるにしても、山岳側に配置した魔法使いに水源はない。
魔力供給のみで天候操作となれば時間がかかる。計算上二日、一方的な蹂躙ができるはずだ。
それに二日というのは最短で準備を整えた時の計算。この進軍ルートを予想でもしていない限り間に合わない。
だが……。
「なんだ……!?」
地図の様子がおかしい。
「なにが起きているんだ……!?」
盤面を覆い尽くすように広がるどす黒い雲。
「ありえない……」
なぜ……。
「なぜあの兵力でこんなことが出来るんだ!?」
◇
「うまくいってよかった」
魔法使いの部隊は思った以上に機能してくれていた。
あとはこれに焦りを覚えたギークが索敵や別働隊にさらに人員を割いてくれればラッキーといったところだが……。
「お……なるほどそうきたか」
敵本陣近くに居座る部隊からの伝令が入る。
本陣からほとんどの兵が出てきたようだ。
おそらく魔法使い部隊発見の連絡を受けて一気に勝負に出たのだろう。
中央軍とは別のルートから迂回してくるようだ。
「そろそろ中央同士もぶつかるか」
兵力で差がある分は天候と地の利でカバーする。
天候が相手に打撃を与えるまでには盤上で一日はかかるから……。
「ゲリラ作戦で時間を稼ごう」
山の中に散りばめた部隊から昼夜を問わず奇襲を繰り返す。
火竜は魔法障壁と投石機で対応。
丸一日持てばいい。
そして……。
「きた……!」
ポツリ、ポツリと、その滴は次第に大きく、そして激しく山肌を打ち付ける。
戦場に雷が轟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます