第5話 武器屋
「なるほど……お兄さんに装備をねえ……」
武具店のお姉さんの反応は最初の門番のものに近かった。
怪訝そうな顔でじろじろ見られて居心地が悪い。どうも全く俺が戦えるようには見えていないらしい。
「そっちが初心者用セットだけど……お兄さんが……?」
どうしてだろう。そんなに戦うように見えないんだろうか……。
一応王宮執事として雑事から戦闘まで幅広くこなしてきたし、そのためのトレーニングは欠かしてなかったんだけど……。
「リルト。お前さんこれまで苦戦するような相手と戦ったことがねえだろ?」
「苦戦……?」
思い返すがたしかにないかも知れない。
いやそんなことをした時点で任務は失敗だ。一方的に無力化できなければ執事の務めは務まらない。
厳密に言えばそれが執事の務めかという問題は一旦置いておく。
「だろうなあ……だからだ。実力の割に覇気がなさすぎんだよ」
「覇気……こうか?」
意識してそういったものを出そうと試みてみる。
「ひっ!」
「うわっ……おい馬鹿! それは殺気っていうんだよ!」
「難しいな……」
「どうすんだ武具屋の姉ちゃん立ったまま気ぃ失ってんぞ!?」
「ああ、今戻す」
頭部に程よい刺激を与えれば目覚める状態だろう。
「はっ……なんか一瞬すごいものを見た気がしたんだけど……」
「気のせいだ。だが姉ちゃんが思うより意外とこいつは腕が立つんだ。もうちょいいい装備出せねえか?」
「ああ……わかったよ。なんか私もそのほうがいい気がしてきたさね」
そう言って奥に引っ込んでいく店員。
「お前さんには装備なんざあってないようなもんだろうが、だからこそ良いもんを買う」
「いいの?」
「いい。というよりそうじゃなきゃ意味ねえんだ。初心者用装備じゃ余計舐められるだろうが」
「それもそうか……」
しばらくすると店員のお姉さんが箱を抱えて戻ってきた。
「ほう。良いのがあるじゃねえか」
「ああ。気づいたかい。これは中古ではあるんだが、悪いもんじゃないよ」
「なるほど」
見た目の箔をつけるためだけということであれば中古なくらいが丁度いいのは確かだった。
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