第155話 【将軍】ドミー、看病されつつ最後の女性2人を【支配】しにいく
大分長くなりましたが、あともう少しでこの章も完結します!
ドラマCDの件ですが、11月20日以降に公開できる予定です。
また決まり次第連絡します。
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「はーくしょん!!!」
「ドミー、大丈夫?」
「ドミーさま、無理はいけません」
「1日だけ我慢するさ。コウトを待たせてはいけない」
例え俺が風邪をひいて熱があったとしても、戦後処理の仕上げは進んでいく。
まずは、俺に別れを告げに来た【女王】コウトに伝えるべきことがあった。
ー各部族の帰還完了までの監視、ご苦労だった。いずれはムドーソ、いや、俺の建国した国が王の位を授ける。大したものではないが、3つ目の権威として使ってくれ。
ー分かりました。しかしお風邪とは珍しい。このコウト特製【ゲキニガ草】を煎じた汁物を…
ーいや、遠慮しておく…それより、戦争で家族を失った未亡人の世話は頼んだぞ。
ーそれについては、私の方が将軍より適任でしょう。お任せくだされ。
ーああ。頼んだ。交易で得た収入を充ててもよい。
ー将軍。
ー何だ?
ーコウト亡きあとの【女王】選定、頼みましたぞ。
ー…分かっている。責任は果たそう。
去り際に、コウトは俺に宿題を残していった。
コウトの寿命は、俺の【強化】で伸びたとはいえ恐らく10年。
その後を継ぐものが確定していなければ、再び男性の指導者が誕生する可能性は否定できない。
男性だから戦争を起こすというつもりは毛頭ないが、俺の【支配】によって管理できないのもまた事実であった。
つまり、権威を持った女性が新たに必要となるのだ。
難しい問題だが、きちんと考え抜くつもりだ。
その次は、一足先にムドーソへ帰る【道化】との会談。
もちろん、ライナとミズアを油断なく護衛に付ける。
ーむどーそをほろぼそうとするからてんばつがくだったんだね♪そのまましねばいいのに♪
ー…俺と俺が率いる【ドミー軍】の地位の保証、頼みましたよ。ついでに物資の提供もね。そうすれば、少なくとも内乱が起きることはない。
ー今は信じてやる。だが、もし違えればこのドロテーが刺し違えてでも止めるぞ。
ーその時こそ、触ってやろう。
ーうふふふふふ…
ーははははは…はーくしょん!
ーなんかこの2人仲良くない?
ー【道化】さま、またお会いしましょう。できれば刃を交えずして…
穏やかな会話を終えた後、【道化】も帰っていった。
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その次の日、俺は無事寝込んだ。
「アマーリエ、ゼルマ、【ドミー軍】の撤退指揮は任せたぞ…」
「お任せあれ!その間、お二人とごゆっくり…いたたたた!」
「馬鹿言ってないでいくわよアマーリエ。じゃあ休んでなさい」
3日寝たあと風邪で寝込むという失態を重ねたが、アマーリエたちは何も言わない。
悪いとは思っていたが、今は体調管理に専念することにした。
「ほ、ほら。ちゃんと食べなさいよ」
「ドミーさま、お加減はいかがですか」
…美少女2人に看病されるのも悪くない。
弱った俺につきっきりで世話を焼いてくれている。
そういう存在は、俺の人生の中で皆無だった。
これが、人の暖かさという奴なのだろう。
まるで母親のようなー
「大分熱も下がってきたばぶ」
「…ばぶ?」
いかん、ミズアとの【赤ちゃんプレイ】の秘密がバレてしまう。
「いや、俺の地方ではばぶという語尾をー」
「ち、違うのです!」
「んむう!?」
俺の必死の努力を、ミズアは水泡に帰した。
…自らの胸で、俺の口を塞ぐという強硬策で。
「あっ…違うのですライナ。ドミーさまとミズアは、ライナの目を盗んで赤ちゃんプレイなどしていません。くっ…」
快感に身をくねらせながら、ミズアは弁解する。
いや弁解になってないよ!?
全部バラしてるよ!?
というか意識が…
柔らかい胸に潰される…
幸せと苦しみ…
「へえ…」
炎魔法使いライナは、氷のように冷たい声を発した。
「私がいないところでそんなことをねえ。私が、ミズアより子供っぽいからってそういうことするんだ…」
病人用の食べ物を入れた木の器を、ぷるぷると震わせる。
「ミズア、どきなさい」
「は、はい!」
「ぷはっ…ち、違うんだライナ!俺はお前のスレンダーな肢体もー」
「問答無用!文字通り食らえ!!!
「うん!?この食べ物は…苦あああああい!ま、まさか!」
「その通りよ!コウトさんの【ゲキニガ草】で作った汁物だわ!!!どんな風邪もたちまち治る優れものよ!!!」
「やめてくれ!根性で直すからそれだけは!」
「病人は黙ってなさあああああい!」
「うわあああああ!!!」
その後しばらくうなされたが、しばらくすると回復した。
良薬は、口に苦し…
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こうして俺の体調も回復し、【ドミー軍】の撤退準備も整う。
だが、最後に1つだけやり残したことがあった。
「アマーリエ、彼女たちに動きはないな」
「はっ。罪を許されてから、自らの【ユルタ】に籠もっています。一応、兵士2名に監視させています」
「では、会ってくるとしよう」
「…今更何かことを起こすとは思えませんが、お気をつけて」
「ああ。ミズア、ライナ。用意は良いな」
「はい」
「ええ」
俺とライナはミズアの手を握る。
【高速】個性を利用し、ミズアは瞬時に跳躍。
空をゆっくり移動しながら、目的地へと向かった。
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草原の真ん中にぽつりと残された、小さな【ユルタ】。
そこに彼女たちがいた。
「将軍、内部の者に変化はありません」
「ご苦労。下がって良い」
監視していた【ドミー軍】を下がらせ、【ユルタ】の中に入る。
中には、2人の女性オークがいた。
正確には、歳若い女性と、その手に抱かれる赤子。
【叛逆者】が遺した家族。
すなわち、カクレンの妻と生まれたばかりの子であった。
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