第23話 ライナはビク◯ビクンしながら力を示し、王はざまぁを楽しむ(後編)

「おほほほほほ!このような大言壮語を吐く者は初めてじゃのう!」

「…」

沈黙を破ったのは、ほかならぬエルンシュタインだった。

全力を使い果たして声もでない私を、愉快そうに見つめる。


「おぬしは、逃げることもできた。こそこそと潜んで冒険者を続けることもできた。それを、過去の失敗も恐れず我と直談判しにくるとはな」

「…私だけの案ではありません。ドミーとも相談した結果でございます」

からからの喉をおさえて、やっとの思いで話す。

感触は悪くない、きっとー、


「じゃが、余興が足らぬな」

ぞくりとする。

エルンシュタインの声は冷たかった。

「【男性】ドミーとやらの力があれば、功績を残せるほどの力を残せるといったが、そのような話は今まで聞いたことがない。信がおけぬし、そのまま認めるのも面白うない」

「…!」

私は心臓をバクバクさせながら、エルンシュタインの声に耳を傾けた。


「そうじゃ!」


エルンシュタインは手をたたいた。

「それほど強力な【スキル】を使えるなら、この【青の防壁】に攻撃してみせい!この防壁は、数多の攻撃に対して無傷を誇ってきた。もし揺るぎでもしたら、お主の申し出を認めよう」



==========



どうしよう、どうしよう。

私は王のもとに近づきながら、パニックになっていた。


「お主とドミーに対する警戒は解除した。遠慮なく、【青の防壁】に近づくがよい」


エルンシュタインは笑っていた。

こういうシナリオは完全に予想外だった。

Bランク上位の力は出せるはずだから、それをもって証明とする手はずだったのに。

【青の防壁】なんて、Aランクでも揺るぐかどうか分からない鉄壁の防壁だ。

傷がつかなければ、私は単なる無能ということになってしまう。

そこまで強力な【スキル】、発動したことがないのに!


震えが止まらない。

頭が痛い。

吐き気もする。


ごめん、ドミー。私、あなたの期待にー、


「ひゃあああああん!?」

強烈な感覚と幸福感。


ドミーが私の背中を触ったのだ。

でも、これまでの【ビクスキ】とは違う、即効性の強い快楽。


【クイックビクスキポイント】


そういえば、ムドーソ城に入る前に、何かしてた気がする。

一瞬でビクンビ〇ンをもたらす、背中に設定されたポイント。


初めて触られたせいか、押し寄せる感覚もひとしおだ。



==========



ー初めて出会った日。


ー触られた体験。


ー話し合った野望。


ーラムス街の共闘


ー食事や買い物を楽しんだひと時


ー抱き合った夜


ードミーに褒められて泣いたこと


いろんな記憶が、想いが、情念がー流れ込んでくる。



==========



「どうした?やらんのか?」


エルンシュタインの声で、我に返った。

振り返ると、ドミーが心配そうな表情を浮かべている。


ー大丈夫か?


口にはしなかったけど、言いたいことは表情でわかる。

満面の笑顔で返し、王に向き直る。


私は、【ルビーの杖】を構えた。

これまでの【ビクスキ】よりも、はるかに強力な力を感じる。


【クイックビクスキポイント】がもたらした新鮮な感覚、【ルビーの杖】や【ルビーの腕輪】による強化、そしてなによりー、


全ての迷いを振り切った、澄み切った感覚。


「いいえ、放ちましょう。私の全力…いや、正道を!正真正銘、全てをぶつけます!!!」


杖に宿った炎の色は、青かった。


「青色だと!?」

「開祖エルムスの側近中の側近、ジョタさまのみが会得したという【蒼炎】か!」

「あの小娘、一体…」


私は、新しい【スキル】の名を叫んだ。





「【フレイム】!!!!!」


巨大な蒼い奔流が、【青の防壁】を包み込む!

それまで穏やかだった防壁は、にわかに揺らぎ始めた。

しばらく拮抗していたもののー、


「おい、【青の防壁】が赤くなっているぞ!!!」

「まずい、力を消耗している証拠だ!」

「誰か、王をお守りしろ!!!」


赤くなりながら、急速にしぼみだした!

王の座っている玉座にも、もう少しで火が届きそうになる。

そしてー、


バリバリバリバリ!

ガラスを引き裂いたような異音と共に、【青の防壁】は砕け散った。

そして、私の【フレイム】も同時に消える。

相打ちだった。


エルンシュタインは、最後まで玉座から動かなかった。



==========



「ぬふふふふふふ…ははははははははは!!!素晴らしきかなライナよ!!!」

少し灰で煤けていながらも、エルンシュタインは大喜びだった。

【青の防壁】はすでに復活している。

時間とともに回復する仕組みだ。


「貴様の正道、見せてもらった。望み通りにしよう」

「王よ!この【スキル】は明らかにAランク以上!危険では…」

「ランケ!!!貴様は、ライナと我との誓いを軽視するか!!!無礼千万なり!!!」

「はっ…」


「で、では王さま。私は…?」

「おう、好きなギルドでもなんでも立ち上げるがよい」

「ああ…ありがとうございます」


私は、膝から崩れ落ちた。

「ライナ!」

誰かが呼ぶ声が聞こえる。

ドミーだった。


ビクン〇クン。

少しだけ、感じてしまう。


「ありがとう、ドミー…」


意識を失ったが、私は満足だった。




私の正道は、王に通じた。








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