第12話 門番をビクビ◯ンさせざまぁする

「冒険者一行…おい!こいつ、くっせえ【男性】じゃねえか!」

検問所で俺とライナの番が来たが、さっそくトラブルに見舞われた。

数人いる兵士の内、リーダー格と思わしき【女性】が絡んできたのだ。

【男性】と見まごうほど筋骨隆々で、俺の身長よりも長い槍を傍らに携えている。

だからこそ、俺が【男性】だとあっさりバレたのかもしれない。

変装の意味もないので、ぼろきれを脱ぐことにした。


「ここはお前みたいな家畜が来る場所じゃねえんだよ!帰れ帰れ!」

「そ、そんな。別に怪しいものじゃありません」

わざと気弱な態度を装い、様子を伺ってみる。

「口答えすんじゃねえぞ、化け物があ!」

口から唾を飛ばし、激高した。

どうやら、単純な性格らしい。


「あーあ、アメリア隊長を怒らせちゃった」

「あの人、ああなるともう聞かないのよね」

「【男性】の方、【シックスパック】をえぐられるだけじゃ済まなさそ~キャハハハハハ!」

周りの部下も似たようなタイプらしい。


「あんたたち!いい加減に…」

ライナもさすがに気色ばんだが、静止した。

これぐらい突破できなくて、今後の目標を達成できるわけがない。


「じゃあ、こうしませんか。どうやら力に自信があるようですし、力比べでもしましょう」

「ほお、上等だこらあ…」

計算通り、槍を傍らに置いてこちらに寄ってきた。

そして、中指を立て、挑発のポーズを取る。

「一発はお前に譲ってやるよ!そのあと、裸にして城壁に吊るしてやるから覚悟しろよ奴隷種族!はーっはっはっはっ!」

「…」


大仰な態度を取るアメリアに俺はすたすたと近づいて行った。

「ドミー!危ない!」

ライナが悲鳴をあげるが、そのまま進む。

特に何の構えも見せないので、アメリアは俺の意図を把握できていない。

「ああ?何のつもり…」

そのまま、筋肉バカの肩をぽんと触った。


「ほへええええええええ!?」

効果てきめんだった。

その荒々しい体格からは想像できないほど情けない声を出し、一瞬で地面に倒れる。


「な、なんだあいつ!?」

「アメリア隊長を一瞬で…」

驚愕する部下たちを無視し、俺は伏したアメリアを手で軽く触る。


「て、てめえ。あ、あはははははは!なにしやが、いひひひひひひひ!」

発狂したかのように笑い出し、じたばたと子供のようにもがく。

「どうしましたか?元気がないようですが」

容赦はしない。

といっても、ちょっと強めに背中をさすっただけだ。


「ひーっ、ひーっ、ひーっ…してください」

「何ですか?」

「許して下さあああい!もうしませんからああ!汚い【男性】って言ってすいませええええん!」

「ならばよし!」

「あひゃああああああん!…あへえ」

ビクビクビ〇!

とどめのダメ押しで背中をぱんと叩くと、素っ頓狂な声を出し、意識を失った。

口から泡まで吹いている。


-兵士アメリアのステータスを獲得しました。

ナビが俺に告げてくる。


2.兵士アメリア(【ビクスキ】後)


種族:女性


装備:【戦士の鎧】【特注品の槍】


クラス:戦士


ランク:C+


スキル:【ランス・チャージ】


体力:123→237(ビクスキによる強化)


魔力:最大0(ビクスキ後も変化なし)


ビクビク回数:1回


ビクビクポイント:背中


傾向:お、俺と毎日筋トレしようぜ!マッスルマッスル!


分かりやすいパワータイプか。

しかし、前から気になってたが【傾向】ってなんだ?

-【ビクスキ】後の女性を、完全に支配下に置くために必要な行動です。実行すれば、ドミー様の手足となり、命まで投げ打つでしょう。

つまり、こいつと毎日筋トレすれば、色々指示を出せる本格的な部下になるってことか…面倒だから辞めておこう。


「さあ、ライナ。行こうか」

俺はライナの方を向いた。

ぽかーんとして表情を浮かべている。

「大丈夫だ、傷一つない。触っただけだ」

やがてはっとした表情に変わると、笑顔となった。

「ふ…ふふふふふ。やっぱり、あなたってすごいわ」

もちろん、【ビクスキ】の影響ではない。

ライナの心からの笑顔だ。

「まだまだこれからだぞ。やることはたくさんある」

「そうね。急ぎましょう!」


あっけに取られる周囲の人間を尻目に、俺とライナは城壁内へと入っていった。



後日、アメリアは「俺、女になっちまった…」と述懐し、「どういうことなの…?」と周囲の部下を困らせることになるのだが、それはまた別の話。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る