第11話 都市国家の【女性】50000人を全員ビクンビク〇させたい

レムーハ大陸は統一国家を持たず、大小数百個の都市国家が割拠していた。

その中でもアンカラ地方に存在するムドーソ王国は強勢を誇り、同盟勢力を含めて人口5万人を擁している。

建国から約100年経過し、統治に緩みがでていたものの、表向きは平穏であった。


レムーハ記 ドミー王の記録より抜粋



==========



「ねえ、これからはあんたをどう呼べばいい?」

「敬愛すべきドミーさまとかどうだ?」

「却下」

「…じゃあドミーでいい」

「私の事は最愛の人ライナさまと呼んでいいわよ!」

「恥ずかしいからライナで」

「ちぇー…つまんないの」


-ムドーソ王国正門。

俺とライナは、城内に入る人々の列に並び、自分たちの順番を待っていた。

どうやら、兵士による検問が行われているらしい。

ゆっくりと前に進んでいるものの、もう少し時間がかかりそうだ。


「じゃあドミー、ここからは真面目な話」

ライナは声をひそめ、周囲に聞こえないような声で話しかけた。

「城内に入ることはできるかもしれないけど、【男性】と知れば、街の人々は残念だけど冷たい態度を取るわ。どうする?」


ライナの心配はもっともだった。

とりあえず。今は途中で拾ったぼろきれで顔を隠しているが、バレるのも時間の問題だろう。


これまでロザリー一行に連れられて色々な街へ行ったが、基本的には家畜と同じ扱いである。

寝床は馬小屋、食事も粗末なモノしか与えられなかった。

「奴隷主の義務よ!」ということでロザリー自ら持ってくる。

今から思えば、あの時だけロザリーは妙にやさしかった気がする…気のせいだろうか。

「今からでも、もっと【女性】っぽい服装をするとかして誤魔化さない?私がばれないようにしてあげるから。ね?」

不安と優しさが混ざった声で、ライナは提案する。

確かに、普通ならそうするだろうがー、


「いや、正面突破する」

「は!?」

「俺の体格は【女性】とは違いすぎる。誤魔化したところでいずれバレるさ。それに、町に滞在している間、ライナにも迷惑がかかるだろう」

「じゃあ、どうするつもり?」


俺は、その問いには直接答えなかった。

「なあライナ。ムドーソの人口、つまりこの王国の【女性】は全部で何人だ?」

「町には2万人、周辺の勢力合わせれば5万人いると言われているけど…まさか」

「ああ」


ライナに向けてにっこりとほほ笑みかけた


「全員触って支配しよう」



==========



俺の提案に、ライナはすぐに返答しなかった。

下をうつむき、俺の後ろを歩く。

さすがにスケールの大きい話だったかな。


実は、前日すでに脳内の声、ナビに聞いていたのだ。

ナビの返答は、可能であるとのことだった。

50000人を【ビクスキ】でビクンビ〇ンさせれば、レベルも大幅にアップするらしい。

俺がレムーハで生き延びるため、なによりライナに楽をさせるため。

それが一番効果的なのだ。


「…本当にやれると思ってるんでしょうね」

ライナが再び口を開いた。

「結局のところ、50000人といっても全員触るわけじゃない」

「上の人間を狙うってこと?」

「ああ。極論を言えば、王一人触れば済むかもしれない。後は王を操って、ムドーソの住人全員俺と握手するよう命令させればいい」

「…分かった。じゃあ、2つ約束して」

「なんだ?」


「1つ、町の人間をむやみに殺傷しないこと」

ライナの表情は、真剣そのものだった。

さきほど軽口を叩いていた表情とはまるで違う。

「あなたは、これまで【女性】にひどい仕打ちを受けたかもしれない。それは否定しないわ。辛かったよね…」

「…」

「でも、だからってあなたが個人的な復讐心で、罪のない人を殺傷したりしたら…」

「その時は、どうする?」

「…ドミーを殺すわ。それで、あたしも死ぬ。地獄の責めを2人で受けることになるでしょうね」

「分かった。そんなことはしない」

「信じてたわ。それでこそドミーさまね」

「恥ずかしい呼び名はやめろ。もう一つはなんだ?」


「もう一つは…」

ライナは口ごもった。

「心配いらない。【抱きしめの儀式】をした仲じゃないか」

「へ、へんなこと思い出させるな!」

「すまない。で、なんだ?」


「…成功も失敗も、私と分かち合うこと。それが条件よ」

ライナはそういうと、ふいと横を向いた。

少し、顔が赤くなっている。


「ああ、約束する」

俺は返答したが、ライナは応えず、黙々と歩いた。

兵士数人がたむろする検問所までは、もうすぐである。


「…ねえ」

「うん?」

「手、握って」

「いいのか?」

「いい。景気づけよ」


ライナは、少し震えているようだった。

「分かった」

俺は、ライナの指と自分の指を絡ませて、しっかり握る。

コンチが見せてくれた記憶では、【恋人繋ぎ】というらしい。


ビクン。

「ん…」

ライナは艶っぽい声を出した後、笑い出した。

「ふふふふふ…」

なんとなく、俺も笑顔を作った。

「ははは…」

「ふふふふふふ…」

すぐ前にいた商人がけげんな表情を浮かべるが、構うものか。

俺たちは、自分の順番が来るまで、そのまま笑い続けた。


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