第10話 新天地に移動しながらビクン〇クン

「ライナ…」

俺は、ライナに優しく声をかける。

「わかってるわよ…ほら」

渋々といった感じで、ライナは右腕の腋を俺に見せる。

毛はまだ生えておらず、真っ白ですべすべだ。


「に、匂ったら承知しないからね!」

「わかってるよ。じゃあ…」

「くひっ!」

ゆっくりと触ると、ライナの口がゆがむ。

かなり慣れてきたとはいえ、やはり強烈らしい。

「ゆ、ゆっくり頼むわね」

「ああ」

丹念に触っていく。


「うぷぷ…ふふふ」

ライナはいやいやと首を振り、かなりこらえていたが、

「あははははは!腋はやっぱり刺激が…!」

こらえきれずに笑い出した。

そしてー、


「・・・っすまない、くしゅん!」

俺は慌ててライナから口を離し、手で鼻を押さえてくしゃみをした。

「…」

ライナはそれをぼーっと眺めている。


「すまない。誰かが、俺の噂をしてたようだ」

「そう…じゃあ、最後はぎゅってして」

「ん?」

「優しい方がいいから…」

「分かった」


希望どおり、やわらかい肉体を両手で抱いた。

ビクン〇クン。

「ふふふ…何度やってもいいわね」

【ビクスキ】を終了させる。


「ちょっと休憩…」

休息を求めてきたので、ゆっくりと降ろす。

本来ならこれで終了だが、今日は確認すべき事項があった。


「ナビ。ライナのステータスを詳しく表示してくれ」

-分かりました、マスター。

【ビクスキ】のナビゲートを行う脳内の声は、ナビと名づけた。

名前があった方が都合がよい。



ステータスデータ呼び出し中…


1.魔法士ライナ(【ビクスキ】前)


種族:女性

装備:【魔法士のドレス】【木の杖】

クラス:魔法士

ランク:C

スキル:【ファイヤ】

体力:5

魔力:17


1.魔法士ライナ(【ビクスキ】後)


種族:女性

装備:【魔法士のドレス】【木の杖】

クラス:魔法士

ランク:B

スキル:【ファイヤ・ダブル】

体力:最大34

魔力:最大127

ビクビク回数:26回

ビクビクポイント:腋

傾向:優しい方が好き…かも


※【ビクスキ】の効果は30分間


「今のライナの体力、魔力は?」

-体力が28、魔力が111です。

「まあ、毎朝腋ばかりでは効果が多少薄まるか…ステータスを見れるのは【支配】状態、つまり一度触れた【女性】限定なんだな?」

-そうです。


コンチの言う通り、ステータスチェックは入念に行っている。

レムーハに、ここまで冒険者のスキルやステータスを正確に把握できる技術は存在しない。

うまく使いこなさえば、強力な武器となるだろう。


-2つ報告が存在します。1つは、【ビクスキ】のレベルアップです。

思案にふけっていると、ナビがうれしい報告を持ってくる。

「おお、具体的にどんな効果が?」

-【女性】の肉体に【クイックビクスキポイント】を付与できます。

「…どんな仕掛けなんだ?」

-クイックビクスキポイントを設定した箇所に触れると、即座にビクンビクンが可能です。戦闘など、急な事態の場合に利用できます。

「なるほど」

モンスターが迫っているのに行為に集中できるはずもないので、便利である。


「ライナ」

「ん…」

さっそく、目を閉じて体を横たえているライナに聞いてみた。


「優しくさすられたい所はあるか?」

「なにそれ」

「そういう箇所はあるのかと思って」

「…背中、かな。何かするの?」

「ああ」

「そう…別にいいけど」

少しぼーっとしているようだが、一応問題なさそうだ。


「じゃあ、背中で頼む」

-了解…付与しました。

「で、2つ目はなんだ?」

-あまり良くない報告です。



-ライナさまに【成長阻害の呪い】がかけられています。



==========



「【成長阻害の呪い?】」

俺と街道を歩きながら、ライナがけげんな声をあげる。

森はとうに抜け、目的地までもう少しだ。

「ああ、今までなかなかステータスが成長しなかったのも、そのためらしい」

「そう、なんだ…」

そういうと、ライナは下を向いた。


【成長阻害の呪い】。

状態異常の一種で、モンスターを倒すことで得られる経験値が一切得られない状態だ。

何度スキルを利用しても変わらない。

残酷な呪いだ。


「心当たりはあるか?」

「分からない…」

あきらかにしょんぼりしているので、少し心が痛む。


「じゃあ、私って、もうずっと成長しないのかな」

「いや、解決策はある」

「本当!?」

「【サザンカの粉末】というアイテムを利用すれば、解呪できるらしい。だが、かなりの高額だそうだ」

「…いくらぐらい?」

「1500ゴールドだ」

「たかっ!」

「なら稼げばいい。2人で」


俺は、精一杯明るい調子でいった。

「今から行くムドーソの町で、ギルドを結成できるんだろ?モンスター退治を何度か成功させれば、どうとでもなる」

「ドミーってさ、自分には戦闘スキル1つも無いの忘れてるわよね…」


ライナは一瞬あきれた表情を浮かべるが、すぐ笑顔になった。

「でも、希望が出てきたわ。ありがとう」

「…ああ」

今まで何度も【ビクスキ】しておいてなんだが、少しドキッとする。

コンチが言っていたような、荒々しく全てを支配する【男性】にはまだ遠い。



==========



「ここか…」

「ええ!あなたがお望みの新天地よ!」


そこから何時間かして、俺とライナは目的地に付いた。

水の張られた堀、それに沿って建築された城壁と塔、中心に据えられた巨大な門。

門には俺たちと同じような冒険者や旅人が列を成しており、町の内部に入ろうとしていた。

レムーハ大陸の北西、アンカラ地方で最大の都市。

ムドーソである。

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