その②
* * *
「何がどうなってうちの
母が窓の外の遠くの山を見つめる。
実はエリン様のご自宅に招待されてしまったのだ。自宅ならば、周囲の目を気にすることなく、恋バナできるでしょう? というような
エリン様はとっても気さくだけれど、侯爵令嬢。エリン様の発言は重く、ともすれば命令と
同格の令嬢といえば、アメリア侯爵令嬢がそうなのであるが、王太子
そこに私という、同級生で対等で話しやすく、おまけに破格級の婚約者持ちで、どれだけのろけてもやっかまれることのない友人ができた! ということらしい。
異議あり! 私とエリン様は全く対等じゃない。侯爵家と下流伯爵家の間には大きな大きな格の差がある。そもそも私、けっこう萎縮しているんですけど?
そういうことをオブラートに包んで
「あのねえ? 博士……っていうのはさておいて、あのルーファス様の婚約者が務まっているのよ? ただ者であるわけがないでしょう? ピアも別格なの。わかった?」
あ……それはちょっぴりわかるかもしれない……。
「一体何を
母が
「そうなんですか? エリン様はとっても気安い方ですよ? 私はうちのシェフのチーズの焼き菓子が美味しくて自慢だからそれがいいかなって」
私は
「ん~父上の実験中に
聞くんじゃなかった。
「……いや、喜ばれるかもしれんぞ? ホワイト侯爵領は今王命により急ピッチで
父が本から顔を上げて口を
「ええっ!? 女性への手土産に除草剤なんてありえません! よほどこのあいだ見つけた松ぼっくりの化石のほうが……」
「出たよ! ピアの
「お兄様ひどい!」
「はあ、思いつくものを全部
母は案外思い切った性格をしている。
ホワイト侯爵
エリン様は白と黒の配色が
ガッチガチに
ホワイト侯爵家の
エリン様のお母様、侯爵夫人はいつもいないらしい。
「うちは仮面
なんと言えばいいのかわからない。とりあえず、お土産をエリン様に差し出す。
「……これが例の『化石』? なるほど、
「現在とほぼ変わらない姿を保っている松ぼっくりなんです!
「……遠慮なく受けとれるのはケーキだけね。お母様によろしく伝えてちょうだい。あとで一緒にいただきましょう。お父様って本当に無欲な方なのね。さして親交のない我が家に前回のアドバイスといい今回もとても価値のあるものを……スピーカーは価値すらわからないけど……とにかくルーファス様に報告して扱いを相談しましょう。
ガラス張りの温室には見たことのない原色の花が
「大きい! この果実食べられるのですか?」
「ああ、ちょっと待ってね」
エリン様は小刀をポケットから取り出し、軽くジャンプしてその実をサクッと
「はい、少し苦いけれど口の中がさっぱりするわ。甘みが負けちゃうからこちらから食べてね」
イケメンか!?
勧められるままにまずその黄色の
「美味しい。そしてどこか
「
エリン様が
「このジャンボミカンはビタミンたっぷりです!
「ちょ、ちょっとお待ちなさい! 書き留めるから。あなた、書くもの持ってきて!」
エリン様の家の侍女の
「サラ、あの衣装可愛いね。うちも
「私に限れば意味がないですね。きっちりあと三年あまりでスタン家の真っ黒の侍女服を着ることになるでしょうし」
「三年? そうなの?」
「はい、書けたわ、お待たせ! じゃあうちの自慢の焼き菓子を召し上がれ。私はピアのお土産をいただくわ」
サラの謎期限が気になったけれど、本日の女主人に意識を向ける。
紅茶は少し
「あら、気に入ったの?」
「希少な植物に囲まれた
なぜかエリン様は赤面し、頭を
「えっと、サラと言ったかしら? これ、ピアの
「はい、思ったそのままをおっしゃっています。失礼を承知で言いますが、ピア様にはエリン様におもねる理由がありません」
「貴族社会でこれでは
私は貴族社会で生きていけない……か。なんとなくわかっていた。前世の
自分を心でせせらわらっていると、ルーファス様を無愛想だとおっしゃるのが耳に飛び込んできた。無愛想=クール? だとすれば〈マジキャロ〉の設定と一緒だ。エリン様や世間はルーファス様をどう思っているのだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます