愛情
私は、今を楽しんでいる。
私にとって今は、人生で一番楽しい時間であり、一瞬先の私にとっての今というものも、人生で一番の楽しい時間となっている。
私にとって、こうであるという確定事項が唯一の精神安定剤なわけなのだ。
心が泣き叫ぶ。
痛いと、辛いと、悲しいと。
思考が無視をする。
知らない。聞きたくない。そして目につかないように。
もう一つ。不確定で、決めつけることのできない感情がこう言うのだ。
気付いて欲しい。慰めて欲しい。
誰かに認めて欲しい。
そんな、承認欲求が自身から沸き立つ事に苛立つ。
傲慢だ。欲深い奴だ。嫌な奴だ。
きっと、誰かの記憶に自分が存在するという事実が欲しかったのだろう。
私は可愛くない人間だった。
家族にとってもそうだったのかもしれない。
誕生日に、何かを貰える。
他の子と同様に私は勿論嬉しかった。
だけれども、それを仕草や表情にすることが苦手で。
弟が羨ましかった。
愛想の良い人間で。
愛されている様をまざまざと見せつけられ。
だからだろう、勉学や運動に縋ったのは。
褒められる理由が欲しくて。
ただ、自分を見てくれればそれでよくて。
私は愛情を伝えることができない。
好きな人や好いてくれた人を、遠ざけるしかないのだ。
さようなら。そんな言葉の裏には、行かないで。
情けない人間になってしまったものだ。
心と身体のバランスが崩れ、結局完治したと偽装して今まで生きてこれてしまった。
当時は身体が弱かったが、今は心がダメなのだ。
誰かを愛してみたい。
好きになってみたい。
誰かに愛されたい。
好きになってもらいたい。
当たり前の感情を、私は途轍もなく嫌悪したのだ。
嫌悪して尚、心は求め続ける。
そうだ。愛想良く生きれば良いんだ。
そんな風に、一般常識で言う、素直になればいいのだ。
素直になりなさい。素直になっていいんだよ。
○○さんって、素直だよね。
私を見てくれなくても、俯瞰的に見たときの情景に喜びを隠せない。
殺して。隠して。潰して。
素直って良い。
素直に生きれば良かったんだ。
なんて。
馬鹿だよな。
そんなの俺の幸せになっていない。
俺が、俺のために、俺だけのために必要な幸せ。
お前の求めているものはそうじゃないだろう。
夢や希望を見せたって、結局それは夢であり希望でしかないのだ。
断固拒否する。
俺は馴れ馴れしくするストレスなど要らないし。
俺は泣き叫ぶ心を殺し隠し潰すことを許さない。
俺を救い幸せにすることができるのは、俺しかいない。
自分しかいないんだ。
それは、誰かに求める事では決してない。
肉親であっても恋人であっても、何人たりともその権利を有する資格は持てない。
だから、今という一瞬が連続的に須らく幸せな時間となる。
他人は良き隣人だ。
そんな感覚を掴んだとき、誰かと関わることが楽しくなった。
感情の手入れ トーカ @Kentttta
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