七つの神体と戦う

さいらなおき

第0話

 足元にいる一匹の青いアリが言った。

「今から、君には別の世界で生きてもらう」

「ああ、ということは私、死んだんですね?」

「そうだ」

「うーん、人生五十年も生きてると、いろんなことがあるんだな。――青いけどアリなのはオマージュですか?」

「君がそう思いたいなら、そう思えばいい」

「まあ、本人がオマージュだといっても、パクリだと非難されることもありますしね」

「どちらにせよ、君たちの世界のことだ。大した問題ではない――ところで、何か希望はあるか? この世界は君たちの世界と違って、我々がちゃんと管理しているから、たいていの望みはかなえられるぞ」

「じゃあ若返りとか」

「十五歳くらいでいいか?」

「お願いします。あと、女の子にモテる容姿と、超人的に高い身体能力と、健康で怪我や病気とは無縁の身体とか」

「いいだろう」

「言葉も通じますよね?」

「通じるようにしておこう」

「派手に魔法とか使えると嬉しいんですけど」

「それはできないが、それに近い能力でかまわないか」

「かまいません。ちなみに世界で一番がいいです」

「世界で一番高い能力だな。使えるようにしておこう」

「ありがとうございます――それで、その世界で私は何をすればいいんですか?」

「特に目的はない。君がその世界にいることが重要なのだ」

「はあ、存在が大事、と」

「ちょっと違うが、君には理解できないので、説明することができない。では、もういいかな?」

「最後に一つだけ。ちょっと気になったんですが、私が元いた世界は管理されていないんですか?」

「そうだ。だから君にしたように、そこから何かを引き抜いても問題が生じないわけだ。もういいかな?――では、行きたまえ」


 ◼︎ ◼︎ ◼︎


 横山光輝先生に、敬意と感謝を込めて。

 ――どうか、不敬に当たりませんように。


〔つづく〕

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