10月4日(火) JK、ぼーっとする

 ……ほんと、今日は色々あって疲れた。


 少なくともこれまで見た中で一番美しい森にため息をつく。

 ……ため息ばっかつくと幸せが逃げる? ……今はつきたい気分なんだよなぁ。


 黄昏れる空をぼーっと眺める。


 そういえば、朝のドラゴンってどこらへんにいたっけ。あー……向こう側の奥の方に居たっけ、近づかんようにせんとなぁ……。


 服が汚れるのもお構いなしに座る。そして足をバルコニーからふらふらさせた。


 ……明日は、何をしようか。


 今必要なことを整理する。


 まず、沐浴はしたい。すっごい冷たいけど、体がベトベトするほうが嫌だし、しばらく続けてると慣れるはず。


 で、食料の補充、私がこの世界に来た初期地点の探索、かなぁ……。今日できなかったし。


 あと、生活を向上させるためには…………あ、そういえば水車あるのにそこも探索してなかったよね。


 ……そういえば、水車って、この大樹にくっつくようにして建ってたよな。水車があるってことは、何かしらの水力を利用したものがある、はず。この大樹に何かある……?


 ……調べてみる価値はありそうだ。





 ……後ろから聞こえるカッカッというカラスの足音に、食べ終わったのかと振り返ると、カラスはその真っ黒な瞳で私を見つめてきた。あ、食べ終わったのね。


 ツリーハウスに戻ろうと立ち上がる。日はもうほとんど沈んでいて、かなり暗い。早く戻ろう。


 歩みを進め、カラスが入ったのを確認して引き戸を閉める。


 カッカッと音を立てて床の上を移動したカラスは、毛皮の絨毯の上を無音で進むと良い場所を見つけたのか座り込んだ。


 私もそのちょっと離れたところで横になる。


 ……そういえばこのカラス、糞もちゃんと外出てしてるみたいだし、あんまり鳴かないし、暴れないし、本当に礼儀正しいよなぁ……。私の言うこと聞いてくれるし。


 ここが異世界だからかなぁ……? 異世界パワーで意思疎通できるようになったとか! 


……普通なら馬鹿げてる話だと思うけど、この世界だと否定できないんだよなぁ……。


 ちらりとカラスを見る。


 意思疎通が少しはできると分かったおかげで、一番嫌いな鳥でも少し、いやかなり愛着が湧いたし、孤独感も紛れた。おかげで食料もいっぱい見つかったし。


 ありがとね、と目を瞑ったカラスにポツリとつぶやく。カラスは座ったせいか丸々としたフォルムになっていて、ちょっとかわいい。


 ほんと私チョロいな。


 ふっと息を吐く。


 

 ……もう外も中も真っ暗だ。


 ここは電気もないから本当に暗い。……朝にちらっと見たが、天井に何か入れれそうな鳥籠? みたいなものがぶら下がってただけで何もない。


 鳥籠と言っても鳥が止まる枝みたいなのはないし、丸い檻みたいな、そんな形のものだから使い方の検討もつかない。


 ……まぁ、今日はもう眠ろうと目を閉じる。


 何度も言うが、考えても無駄なのだ。


 ……だって答えが無いんだから。


 体を丸くして、目を閉じる。正直枕が欲しいが、わがままは言ってられない。

 

 ……おやすみ、と心の中でつぶやきながら、私は睡魔に身を任せた。

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