大好きな幼馴染彼女を姉貴に奪われました。

こばや

あらすじ的なプロローグ 絶望の始まり

「ごめんね、りっくん。別れよ……?」


 鷹峰たかみね 陸斗りくとの幼馴染で、陸斗の初恋の人で、そして陸斗の初めての彼女である櫛形くしがた 琴里ことりとのデートの帰り際に言われた一言で、陸斗にとっての全てが終わった。


「そっか……仕方ない、よね。ありがとうね、俺なんかの彼女になってくれて」

 その時は自分が不甲斐なかったからだろうと思い、陸斗はあっけなく引き下がる。

「……俺はちょっと用事があるから、琴里ちゃんは先帰ってていいよ。ここからもうすぐでしょ?」

「うん。……りっくん、本当にごめんね……」

「いいから。気にしてないからさ……」

 そう言って、陸斗は泣きたい気持ちを押し殺しながら琴里を帰るように促す。

 そして琴里の姿が見えなくなるまで陸斗は最後まで見送った。

「……ふぅっ。行ったかな……?」

 琴里が角を曲がるのを確認した陸斗は早歩きで近くのトイレに駆け込むのだった。


「どうして……!どうしてだよ……!!琴里……っ!」


 自身の思いの丈を公衆トイレのガラスにぶつける陸斗。

 トイレの中に使用者がいたのかもしれないが、陸斗にはそれに気配る余裕なんてなかった。



 やがて何とか心を落ち着かせた陸斗は予定より遅くなったが、帰路へとつくことにした。

 けれど、陸斗の悲劇はこれで終わりじゃなかった。


「おかえり陸斗、随分とゆっくりだったのね……って、どうしたのその顔!」

 陸斗が玄関を開けると陸斗の姉・美海が心配そうに陸斗の頬に触れる。

 琴里と別れた後に大泣きしたのだ、瞼の下が腫れていたのだろう。

「あーそれが……」

「琴里ちゃんにフラれちゃった?」

 陸斗が琴里とデートしてくると伝えてあった為の推測なのだろうか、ズバリと当てる美海。

「……っ!!」

 突然の事で指摘された瞬間に言葉が上手く出なかった陸斗。

「なるほどね……」

「……きっと俺に原因があったんだと思うよ」

「理由は聞いてない?」

「……聞けるわけないだろ」

「なら、私が言わなきゃだね」

 ふぅっ、と息を吐くと美海が真面目な顔になった。

「え……?それってどういう」

「ごめんね、お姉ちゃんが琴里ちゃんを奪っちゃったの」

「は……?えっ……、はぁ!?」

 あまりにも突然の事で、陸斗の理解が追いつかないようだ。


 姉の鷹峰 美海から突きつけられた衝撃の事実に、陸斗はただただ呆然とするしか出来なかったのだった。



 それでも次第に事態の把握が出来た陸斗にはこんな思いがフツフツと湧き上がるのだった。



『 絶対琴里ちゃんを姉貴から奪い返してやる!!!!』


 と。

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