第2話
幼い頃から、沙耶は闇のなかのそれらに気づいていた。
母も、父も、弟も闇のなかのそれに気づくことはなかった。
唯一、沙耶と同じものを感じ取っていたのは祖母の雪だった。
お前を喰ってやる。
暗闇から聴こえる、怯えた子供を嘲笑いながら、執拗にこちらを見ている闇。
祖母は泣きながら怯えている沙耶に決まってこう言うのだ。
-沙耶、怯えるんじゃない。あれらは闇に潜むもの。闇のものは生きたものの輝きを欲しがるけれど、あれらはこちらが気づかなければ存在しないも同じこと。だから、聞いてはいけない。見てはいけない-
でも、おばあちゃん、すごく怖いの。聞きたくないけど聞こえる。見たくないのに見えるんだもの。
怯える沙耶に、雪は歌いながら背中をさすってくれた。
カクヨニアラン ミタマノタマ
ミタマヲミガキ カガヤキアラン
カガヤキアリテ ヨルガアル
ヨルニハ カガヤク ホシアラン
呪文のようでもあり、子守唄のようでもあり、祖母の歌声は沙耶を落ち着かせてくれた。そして沙耶が泣き止むと、陰のものには陽のもの、と言いながら、飴玉を沙耶の口に放り込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます