家出して自由に暮らしたい
コロモ
第一章 始まり
プロローグ 転生
目を開くとそこは何も見えないくらい真っ暗な暗闇だった。
「どこだ?ここは」
俺の言葉はどこにも反響せず、ただ暗闇に消えてゆく。
それからしばらく辺りを見回していると、突如、光が差してきて暗闇を照らしていき、次第に真っ白な空間になっていった。
「そういえば、さっきまで俺、何してたっけ?」
どうしてこんな状況に陥っているか分からないので、さっきまで何をしていたか思い出そうとするが、記憶にに靄がかかったみたいに思い出せない。
「おはようございます。
「うわっ!」
俺が思考を巡らせて自分の状況を整理しようとしていると、いきなり声が聞こえたので、驚きの声を上げながら声のする方に向く。
そこにいたのは、オレンジ色の髪をしていて紫の瞳を持ち、人間とは思えないほどの美貌とスタイルを持っている美女だった。
「私は転生を司る女神、リーイン」
俺は目の前に突然現れた美女に目を見開きながら思考が停止して固まってしまう。
「あなたは残念ながらお亡くなりになりました」
「は?」
何言ってんだこの人……
思考が戻ってきたところに告げられた美女の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまう。
「何って、そのままのことですよ」
「あれ?今、声に出てましたか?」
声に出していなかったと思っていたけど、声に出していたのか?
「いえ、声には出ていませんでしたよ。ただ私が貴方の思考を読んだだけです」
目の前の美女が平然と当然のことのように言う。
「そんなことよりも、おめでとうございます。入江さん」
「お、おめでとうとは?」
俺は美女の突然の祝福に対して、驚きながら聞き返す。
「貴方には転生の権利が与えられました」
「それはすごいことなんですか?」
「貴方はあまり喜ばないんですね。まぁいいですけど」
美女は俺の反応に何か不満があったのか少し肩を落としている。
ラノベの主人公のような反応でも期待していたんだろうか?
「説明していきますね」
「はい、お願いします」
「ええっとですね。まず転生には2種類あります。1つは魂を洗練し記憶を消した後に転生させる転生、もう1つは魂の洗練をせずに記憶を保持したまま転生させる転生です」
美女の説明に相槌を返しながら耳を傾ける。
「そして、基本的には前者の転生をさせていくのですが、たまに、神々の協議で生前がとても辛いものであったり、善行を積んでいたりしていた場合に後者の転生をさせる場合があります。そうなる場合は滅多になくとても珍しいことなのです」
「なるほど」
美女の説明を聞いたおかげでさっきの祝福の意味が理解できた。つまり、俺はその珍しい後者の転生に選ばれたということか。
「質問なんですけど、ラノベみたいに転生先の指定やら力の譲歩やらはあるんですか?」
俺は美女に転生物のラノベでよくあるようなことを聞いてみる。
「申し訳ありませんが、転生先の指定は出来ないのです。ですが、力の譲歩をすることは確約するのでご安心ください」
美女が申し訳なさそうに謝った後、気合いを入れながら力の譲歩を確約してくれた。
「あの〜そろそろ、私のことを美女と呼ぶのやめてくれません?」
「それでは、なんと呼べばいいですか?」
「最初に名乗ったではありませんか。私は転生を司る女神、リーインです!」
美j……
「ムッ」
危ない危ない。女神様が睨んできたのでふざけるのはやめておこう。
「じゃあ、もう1つ質問です。どうして、転生先を指定することができないんですか?」
「それは、あまり神が世界に干渉しない様にするためですね。干渉し過ぎてしまうと人々が堕落してしまう可能性があるので」
「そうなんですね」
女神様が俺の質問に丁寧に答えてくれる。
「もう質問はありませんか?」
「はい」
「それでは、転生の儀式に入らせていただきますね。目を瞑ってください」
「わかりました」
女神様に言われた通りに瞼を下ろす。
死んだって言われたときはかなりの衝撃があったけど、あまり心残りはなかったみたいで引っ掛かりにはならなかった。
しばらくするとだんだん浮遊感に包まれ、思考がぼやけてくる。
「それでは、入江さん。新たなる人生に幸多きことを」
女神様のその言葉を最後に意識が完全に途切れた。
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