第127話「相当に信頼されてそう」

 地下洞窟の探索を午前中で切り上げ、昼飯を一緒に食べてるとフィナがやってくる。


「おや、キミたちが一緒ってことはダンジョンの帰り?」


 制服を隙なく着こなしてるシェラが俺に話しかけてきた。


「ええ、地下洞窟に行ってきました」


「大した速さ。会長レベル」


 報告にシェラは目を丸くする。


「会長はもっと速かったかと思ってました」


 フィーネはたとえるなら回復も優秀な蛍ってレベルだっただろうからな。

 攻略速度はそりゃ圧倒的だったはずだ。


「あの人はすごくても周囲がついていけないから」


 シェラは気持ちはわかると苦笑しながら説明する。


「チームとしての強さを練り上げる必要があった」


「それ考えると、俺たちはまだまだですね。一応三人がかりなら、地下洞窟のモンスターにも勝てるんですが」


 ちょっとせっかちだったかもしれない。

 反省をこめてつぶやくと、シェラは笑った。


「三人がかりで勝てるなら十分だよ。……三人って風連坂は入ってないよね?」


 笑みを消してちらりと蛍を見る。


「彼女は一人で勝ってしまうので」


 カウントに入れたら反則というか、入るカテゴリーが間違ってるというか。


「なるほど、彼女は会長レベルってことね」


 シェラに驚きはない。

 パーティーに入って一緒に行動してるので、ある程度のことは推測できるのだろう。


 蛍は浮かれることもなく黙って目礼する。


「先輩、もしお時間があるんでしたら、またパーティーを組んでくれませんか?」


「いいよ。生徒会の仕事はひと段落してるし、今のキミたちには興味があるから」


「やったぜ」


 俺が言うと、三名は微笑む。

 それほど歓迎してるわけじゃなさそうだな。


「おや、あまりうれしくなさそうね」


 シェラは鋭く見抜いていて、アインに話しかける。


「強い人に助っ人をお願いすると、甘えが出ちゃいそうで」


 彼の返答は優等生だった。


「心配はいらないよ。そんなことはしないから」


 シェラはクールに言う。


「危なくなったら手を出すけど、基本は一年生相応の力でやる」


 彼女に俺たちを甘やかす意思はない。

 それでいいと俺は思う。


 俺の目的は彼女に甘やかしてもらうことじゃなく、将来的に味方になってもらうための足場固めのようなものだからだ。


 臨時パーティーを何度も組んでいかないかぎり、シェラは正式な仲間にはなってくれない。


 めんどうと言えばめんどうなキャラだった。


「ま、もともと風連坂って規格外がいるんだ。二人になっても大してかわんねーだろ」


 ウルスラが気楽そうに言い放つ。

 蛍は何も言わなかったが、シェラは蛍に興味深そうな視線を向ける。

 

 気づかないはずはないと思うのだが、反応はなかった。

 蛍のほうはシェラに対して無関心を貫くつもりらしい。


 それともあとで二人きりになった時、俺には打ち明けてくるのかな?

 そう考えると、俺って相当信頼されてるのだなと思う。


 やっぱりうれしいし、重要キャラとか抜きにしても彼女の友情には応えていきたいものだ。

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