第90話「うちのパーティーはどうなる?」

「何か前置きが長くなっちまったな。とにかく入ろうぜ」


 ウルスラが駆け出すように先頭に立ってダンジョンへ入る。

 

「危ないよ?」

 

 アインがそれに続く。

 おいおいウルスラはローグだろうにと思ってついていくと、彼女は入ったところで俺たちを待っていた。


「よーし、異常はなしだぜ。まあ学園にある鍛錬用の入り口に、いきなり異常があったら困るけどよ」


 ウルスラは快活な笑顔でこっちを見る。


「何だ、安全確認をしてくれたのか」


 俺が言うと彼女はうなずいた。


「まーな。ローグは罠を感知したり敵の奇襲に気づいたりするもんだろう?」


「たしかに一理あるな」


 ローグ一人で先行するのはあんまりほめられたものじゃないんだがな。

 ただ、ウルスラはかなり強くなるし、今言うべきか迷う。


「ノヴァク殿、その理屈で言うならローグが一人先行するのはリスクある行動では?」


 迷ってるうちに蛍が疑問を投げかける。

 自重を求めているのか、それとも彼女の考えを知ろうと探りを入れてるのか。


 彼女の性格からするとおそらく後者だ。


「ゴリアテがついてこなきゃやめてたぜ。そこまで無謀じゃねーさ」


 ウルスラはにっこり邪気のない笑顔を返す。


「なるほど」


 アインは現状戦力とは言いがたいが、シミュレーションと仮定する場合戦士と一緒にいくのはアリだ。


「頼りにさせてもらうよ、ローグさん」


 ここでゴチャゴチャ言っても仕方ない。

 今はいわばチュートリアルだからだ。 


「あいよー、柔軟で話のわかるリーダーは好きだぜ」


 ウルスラの発言に蛍の肩がぴくっと震えたが、何だろう?

 俺が褒められてうれしいってのとは少し違う感じがする。


「フォーメーションはどうするんだ?」


 そんなことは知らないとばかりにウルスラから質問が飛ぶ。


「蛍、ウルスラ、アインが前で俺が後ろになるかなぁ」


 と俺が答えると、


「ひねりがないが、お試し期間だし仕方ないか」


 とウルスラは受け入れる。

 蛍はもしかしたら後ろに下がっても戦えるかもしれないが、そうなると前が不安すぎるんだよな。


 アインは言うに及ばず、ウルスラは回避型ローグだ。

 成長すれば回避アタッカーに成長してくれるが、現段階で要求するのは酷というものだ。


「それがしは普通に戦ってもよいのですか?」


 隣に立ってる蛍が小声で聞いてくる。


「お前が普通に戦ったらみんなの出番がなくなるだろ」


 何しろ第五階層の試練モンスターまで一人で無双してしまう強キャラっぷりだ。

 普通にされるとウルスラの出番はまず間違いなくない。


「目の前まで敵が来たら、その時は反撃する程度でいいんじゃないか」


「承りました」


 とりあえず蛍の動きに制限をかけて、その上で俺たちの動きを確認する。

 今のまま他のダンジョンやモンスターの群れと戦うなんて、やっぱり無謀すぎるだろうなぁ。


 さて、蛍が戦わないとなるとうちのパーティーはどうなる?


 と思っていたが、アインがわらわら人形や噛みつき石の攻撃を止め、その隙にウルスラが倒す。


 俺の投石攻撃も敵の牽制くらいには役に立つ。

 何度か戦闘をくり返し、第二階層に降り立った。

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