第83話「希望者はいつ来るのか」
数秒後仲よく視線をはずした。
その後、生徒会室までは無言で歩く。
ノックをすると男性の声で「どうぞ」と応じられる。
この声はおそらくパウルだろうな。
「失礼します」
三人が入ると生徒会役員メンバー全員が迎えてくれる。
非友好的な視線もあるが気にしてられない。
「どうかしたの?」
と聞いてくれたのはフィーネだ。
「実はパーティーメンバーを増やしたいのですが、生徒会の皆さまに心当たりがあればいいなと思いまして」
「ふん、我々は貴様らのための便利屋じゃないぞ。低俗で粗悪な勘違いというものだ」
俺の言葉に皮肉と嫌悪感がたっぷりこもった返事をしたのは、言うまでもなくリヒターだった。
「心当たりがあればいいんだけど、あいにくと知らないわね」
フィーネが愛想のいい笑みでまっとうな回答をくれる。
「普通、一年生がパーティーメンバーをさがすのに生徒会に頼ることは思いつかない」
シェラが苦笑して指摘してきた。
「あっ……」
俺はうっかりしていたと声をあげる。
言われてみれば一年の時は生徒会に頼ったりしなかったじゃないか。
こういうところは忠実なのか、案外融通がきかない。
なんて文句を言ってはじまらない。
「じゃあ事務室に行って申請手続きの依頼をしたほうがいいですか」
とフィーネに確認する。
「手続きなら私たちでもできるから、ここでいいわ」
それが彼女の返事だった。
「パーティーの希望者をうかがいましょうか?」
シェラが紙をペンを机の引き出しから取り出す。
「あ、はい。ローグか魔法使い、ヒーラーで……」
俺が話す要望をシェラが書いていく。
「現段階じゃ一年はまだ手探りでしょうから、何とも言えないわね。興味を持つ子ならいるでしょうけど」
フィーネがそう言う。
やっぱり出してみないとわからないよなぁ。
アインが全面的に出るならヒロインが来るかもしれないが……。
「シジマたちもジョブ以外の指定がないし、手探り感が強いね」
とパウルに言われてしまう。
「こだわりはないというか、思いつかないというか、そんな感じなんですよね」
「ふん、要するにパーティーの方向性が見えてない愚図ということではないか」
リヒターがいやみたっぷりに口を挟む。
「あなた、少し黙っていて?」
フィーネがじろりと彼を見て叱責する。
「ぐっ……」
リヒターは大きくたじろいで黙ってしまう。
フィーネの威光は彼にとって絶大らしい。
俺だって人間なので正直いい気味だった。
「大事なのは俺たちと気が合うか、仲良くやれるかという点なので」
よっぽど変なやつじゃないかぎりは拒否するつもりはない。
メインかサブというネームド級キャラが来てくれるまでは固定にするつもりはないんだが。
馬鹿正直にここで打ち明ける必要はないだろう。
「無難ね。まあ無理する時期でもないけど」
フィーネが笑うと、シェラがこくりとうなずく。
「リバーシのような成功を収めて浮かれず、堅実路線を歩んでるのはすごいこと」
シェラの評価にパウルが続いた。
「大した精神力だな。本当に一年か?」
「やだな、そんな老けて見えます?」
ここは冗談っぽく言ってかわす。
「見た目は普通の一年よね。平凡だけど清潔感はある感じ?」
フィーネの評価はわりと遠慮ない気がする。
たしかにエースケ・シジマの顔は平凡って設定だったんだっけ。
まあろくに設定が書かれない脇役キャラだもんなぁ。
イケメンなわけがないっていう。
「ドンマイ。男は顔じゃない」
シェラが優しい顔をしてるのは、なぐさめてくれてるんだろうな。
「ありがとうございます」
礼を言うと彼女はペンを置いて、紙を俺たちに見せる。
「できた。これを貼っておくね。会長にサインを入れてもらって」
「ありがとうございます」
もう一回礼を言っておく。
単調だが工夫する必要を感じなかった。
「だいたい何日くらいで希望者は現れるでしょうか?」
俺は自分のためというより、仲間二人のために聞く。
「そうね。貼り出されるのは明日の朝だろうし、早ければ午前中の休み時間かしら?」
とフィーネが推測する。
そう上手くいけばいいんだがな、と思いながら軽く頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます