第72話 足りないものだらけのパーティー
第四階層は第三階層より少し狭く、分岐も少ない。
何度か徘徊すればすぐに道を覚えることができる。
まるで第五階層へのつなぎと言わんばかりだ。
群体で出てきたらうっとうしいキルギルスも、一匹ずつしか出てこない。
「まあ問題は回復役が俺だけってことかな」
と言う。
一応回復ポーションはいくつか持っているからだ。
「問題ってそれだけじゃなくない? バランスも何もないよね、今のとこ」
アインの指摘に苦笑しながらうなずく。
今の俺たちは蛍の圧倒的強さ頼みのごり押しパーティーに過ぎない。
理想で言えば味方を守れる戦士か騎士に魔法使い、それにヒーラーが一人ずつほしいんだが。
ゲームで理想的メンバーがそろうのは早くても紅葉の月、九月ごろのことだ。
「せめてヒーラーか魔法使いはほしいかな」
そうすればバランスがマシになるし蛍の負担も減るだろう。
「風連坂さんは魔法攻撃もできてるから、ヒーラーかな?」
とアインが言う。
蛍は自分の意見を言わないので聞いてみる。
「蛍はどうしたい? 意見を参考にしたいんだが」
「後衛を一人増やすという点は賛成です。前衛はそれがしとゴリアテ殿がいますから」
と蛍は周囲を警戒しながら答えた。
「僕、役に立ててないけどね」
アインは自嘲する。
「ローグのことも検討しないとな」
それを無視して俺は言った。
蛍の負担を減らすという意味じゃ気配探知や罠探知ができるやつを入れるというのが、一番正しいかもしれない。
今のところ全部一人でやってるも同然だからな。
ローグヒロインは一年なんだし、接触することを考えてみるか?
ゲームの通りなら主人公に勧誘されるまではどこの部にも入らない。
プロフィール的に今の俺なら接触しやすいし。
問題は後衛がほしいってところにローグ(前衛)を入れていいのかってことだが、蛍なら言えばわかるだろう。
アインについては二対一で勝つ。
「なあ、これ地上に戻ったらローグを探すことを考えてみないか?」
二人にひとまず提案してみる。
さっきのは独り言と思われたのかスルーされていたが、今度の発言に二人は足を止めた。
「魔法使いかヒーラーかって流れだったのに、何でローグ?」
アインは困惑を浮かべる。
「蛍の負担を減らすという意味じゃ、ローグが一番かなと思ったんだ」
「なるほど」
蛍は了解したという顔になるが、うなずきはしなかった。
「しかし、口はばったいながらそれがし並みの探知スキルを持った者でないと、結局それがしが休めることはないと存じますが」
彼女は遠慮がちに指摘し、うかがうようなまなざしを向けてくる。
疑念じゃなくてたしかな信頼の光が宿っていた。
「どなたか心当たりがおありなのですか?」
「いや、まったくない」
俺はあえて否定する。
将来性はともかく、現段階で蛍と探知スキルでいい勝負できるのは上級生の上位クラスにかぎられるだろう。
変に希望を持たせたり、勘違いを誘発してもよくない。
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