追う人

平原

第1話

 日が暮れるころにようやく仕事を片付けて帰宅し、まっすぐ二階の自室に入った。

 ベッドの上でゆうこがうつ伏せに寝ころんでいた。右手のそばに私の本がある。学校から帰り、いつものように兄の部屋で本を読みそのまま眠ってしまったのだと、そう思った。しかし様子がおかしい。

 近づくと額の上あたりにげんこつほどの大きさのこぶがあり、こぶの肉が裂けて一筋血が流れている。震える手を何とか扱ってゆうこの脈と呼吸を確かめる。初めての行為だがおそらく正確にやれたはずだ。妹は死んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る