記憶と君の彼方
湯々
第1話白崎 奈帆《しらさき なほ》
「今日から私はこの大学に通うんだ」
なんとなく呟いてみた。
私がこの大学に来た理由は特にない、ただなんとなく受けてみてなんとなく合格してたって感じだ。
当然、将来の事については何も考えていない。
まあ、あるとすれば映像系の仕事とかデザイナーとかもいいなーみたいな感じの事くらいは思っているけど、明確な意思はなかった。
大学の入学式は意外に早く終わった。
私立だからだろうか、それともどこの大学もそうなのだろうか。それともこの大学だけなんだろうか、学長が「入学おめでとう」なんて言ってさらに市長さんみたいな人が話しをしていて、なんか良くあるような聞いても聞かなくても変わらないような、実にならないような話を手短に聞かされて、入学式は終わった。
私は今、とある部屋?に行こうと思っている。
それは入試の時に偶然私が見つけた部屋?である。
きっと何かの部室なんだろうけれど。
もしかしその部屋にはなんとなく私を引き寄せる何かがあるような気がした。
本当になんとなくである。
私って本当にテキトーだなーとか思っていると、、、
「この後どうするー?」
という声がまわりから聞こえて来た。
もちろん私にかけられた言葉などではない。でも、そんな言葉につられるように、いざ周りを見てみると出身高校が同じだったのか、もう既に今後の事について話しているような人たちがいたり、取り敢えず友達1人くらいは作っておこうとでも思ったのか、他人行儀で「よろしくお願いします」なんて言い合っている人たちもいてみんな積極的だなー、なんて思っていた。
少し、他人事過ぎるかなぁ……
私は1人で行動している。そしてそれはつまり、周りのどれにも属していないのだということを意味していた。
「うんっ、きっとこの部屋だ」
着いた。
この部屋は校舎の裏側に1つだけある扉で入れる。
中はどうなっているんだろうとか中の人はどんな人だろうとか話しやすい人かなーとかなんの同好会かなーとか考えながら、、、
「失礼しまーす」
この部屋の扉は木でできていてとても古そうな感じだ、でもその古い感じの扉が案外私は好きだったりする。
「誰か居ませんかー?」
部屋の中は本やらパソコンやらが机の上に置いてある
色々なものが散在してあってまるで誰かの基地みたいな感じだ。
見て見たところ誰もいなさそうだ、念のためもう1度聞いてもみようかな、なんて思ってみて
「あのー、誰も居ないんですかー?」
なんて聞き方としておかしいような聞き方をしてみたりした。
返事はない……
当然誰も居無いんだから仕方ないか。
私はまた今度出直そうと思った
「失礼しましたー」
ふぅ、なんか少し暑かったのかな外がさっきよりも涼しく感じる
あれ?さっきまで持ってたはずのこの大学の案内地図がない
あれが無いとこの大学の結構広いから迷子になっちゃう
あっ!きっと今出て来たこの部屋で色々見てるうちに落としちゃったんだと思った。
なら今すぐ入って拾おうと思ったのでもう1度入ろうとしてみたんだけど……
「失礼しまーす」
「……」
ん?なんか風景が違うなぁ
なんか怖いから出てみた。同じ扉から出てみたら違う世界だったとか、それって少し怖くない?
いやいやぁ、、、そげなこと、あるわけなかね?
そしてもう1度扉を開けてみた。
「失礼しまーす」
さっきまで誰もいなかったはずのへやを私は部屋を出て、そしてさらにそこから1歩も歩いていないのでもちろん誰かが入れる隙もない。
さらに言うならば、あんな一途を落としたことに気づくまでの時間はあっても数秒なの、、、
のだから当然返事はないはずなのだ、いやそのはずだった。
「君が白崎奈帆くんかな?」
返事がした。
しかも、先ほどまではありもしなかった少し豪華な古風の椅子にその長い足を組んでいた。
「えっ?」
誰もいないはずの部屋で私の名前を呼ばれたような気がした、いや、気がしたのではなく確かに呼ばれた。
今、私がいる部屋はさっき入った部屋とは明らかに違っていた、さっきの部屋は机の上には本やらパソコンやらがたくさん置いてあって凄いごちゃごちゃしていたのに今入っている部屋では目の前にはよく貴族の大豪邸の家にありそうな大きめのソファーがあった。
さらに周りには棚がありそこには古書のようなものが並べてあってさっき私が入った部屋とは違って整頓されていた。
そしてこの世の場所ではないような雰囲気がある反面居心地は不思議と私を歓迎しているかのようで良かった。
「君が白崎奈帆だな」
もう一度呼ばれた。その声は女の人の声だろうか。
透き通っていてなかなか耳に馴染むものがある。それでいてはきはきとしていてかっこいいとすら思った。女の人の声のはずなのに少しドキッとしてしまった。
「はい……」
うんやっぱり怖いなーここほんとどこなの?わかんないよ
「そこに座れ」
「……」
ん?そこって事は目の前のソファーかなぁ、うん、ちょっと座ってみたい気もする。
でもおかしいじゃん?
さっきまでの部屋とは急に違う部屋に入ってきて誰もいないはずの部屋の中から声がしてその声は私の名前を呼んでいてって絶対に変でしょ……座ろうかなーと迷っていると、
「わからないか?目の前のソファーだ、早く座ってくれ」
やっぱり目の前のソファーだ早く座って欲しいみたいだし座ってみよ……
「わぁっ!」
座って見た途端急に何かが視界に入った
目の前には人ではないような何かがいた、想像通り見た目は女の人だクリーム色の長い髪の毛はすごくさらさらで部屋の中に流れている小さな風で髪の毛はわずかになびいている。
とても綺麗な人で、もしこの人と好きな人が被っちゃったら絶対に勝ち目がないなーなんて、そんな頭の悪そうなことを勝手にひとりで考えていた。
それほどまでに綺麗で特に眼鏡がすごく似合っている思わず見とれてしまいそうになるけれども目の前にいるものは明らかに人ではない、という何かを雰囲気やオーラから放っていた。
「驚かせてすまないね、私はヒュデル、神だ」
「神……」
この人自分のこと神とか言っちゃったよ!
でも神なんて所詮は人が勝手に想像の中で作りだしたものに過ぎないと思っていて、存在するはずがないと思っていたのに、いざ目の前にするとやっぱりいたんだと納得してしまう私がいる。
この目の前にいる存在が、それほどまでに強大で、美しかったから……。
「存在するさ神は、まあでも神といっても君たちの世界では存在しないものっていう程度だけどね」
「君たちの世界?って事はあなたは私たちの世界には存在しないものなんですか?」
「当たり前じゃないか、神なんだからというよりもそもそも私は神でない、君たちの世界でいう神っていうことの意味で言ったんだけどな」
だよね、やっぱり神は居ないんだよね、でもこれによって神はこの世には絶対存在しない、という事が証明されてしまったような気もしてなんか惜しい気持ちもある。
「ですよね」
やっぱり綺麗だなーとか未だに思って入ってはみたのだけれど、ここにきて私は本来最初に浮かぶべき疑問がようやく浮かんだ。
ここってどこだろう。
もしかして異世界とかかなー、私ひょっとして異世界きちゃった?凄いの?
高校とかでは異世界転生もののラノベとかをよんでいる男子とかもいてそういう男子とも喋っていたからそういう知識は少しだけあった。
そんな私の中の考えを見透かすかのように
「ここは私が作りだした別空間だよ」
なんて言い出した、凄いじゃんやるじゃん、こいつ好きだなー、こういうの。
てか空間を作り出しちゃうんだ。
でも私だとしたらこの空間から私たちに現実の空間に戻れんのかなーなんて思った。
だいたい閉じ込められて脱出法方探しながらいろんな冒険するやつ。
「安心するといいよ、この空間とさっき君が入ろうとしてた部屋の扉とこの空間を繋げたんだ、だから出られるさらに君は私が作りだした空間の共用者として認めたから次からは任意で入ろうと思えば入れるし
現実世界のさっきの部屋に入ろうと思えば入れるよ」
凄いじゃん私、よわい18にして遂に空間転移までできるようになちゃったよ、この事あいつらに話したら。
「すげー、俺も今度入れてよー」とか言ってきてはしゃぎそう、楽しみだなぁ、、、
てか、そもそももう二度と高校時代の男子には会えないのかもしれないけれど。
でも少し異世界の知識もあるから少し気になった事がある。
「あのー、この空間は別空間だとして、私たちの現実世界の時間の経過とこの空間での時間の経過ってどういう関係なんですか?」
気になるところだ、ぜひとも知っておきたい。
もし時間の経過が早ければ気をつけなければいけないんだけど……
遅かったり止まって入るとかなら間に合いそうにもない課題をここでやれば終わらせることもできるかもしれないからね!
案外大切なことだよーこれ。
これを機にみんなにも普段から時間に経過についてよく考えてみて大切にして欲しいな。
もっと言えばそういう時間の研究でもしてなんか凄いこと発見してよ、私こう見えても結構そういうのも興味あって小さい頃本読んだりして勉強したんだよ?
「ああ、それならこの空間の時間は現実世界の空間でに時間の経過を1とすると0だね、つまり止まっているようにしておいたよ」
すごくない?みんなきいた?しておいたって事はこいつ時間まで操れちゃうんだよ、もうなんでもできちゃう感あるねー
「そうなんですか、安心しました」
「それよりももっと他に気になる事は無いのか?」
なんだろう、無いよ無い無い、満足だもんなんかあったら顔出すよ!
「えーっと…」
「そろそろ気になる頃だとは思うんだけどな、私が君をこの世界に導いたきた理由だよ」
あっ、忘れてた確かにそれ重要だね、やっぱり理由あるんだ。
もしかしたら「理由なんてないよ、暇つぶししたかっただけてへぺろ」とか言ってきてキャラ崩壊もあるかなーとか思っていたけどそこは真面目らしい。
なんでこんな事忘れてたんだろ、私ってうっかり屋さんだなーとか思っていると。
「教えて欲しいですね」
「だろう、今から言うよ」
「……」
「君にお願いがあるんだ」
え?私にお願いだって?こいつ空間作り出せちゃってそのうえ時間まで操れちゃう何者だよって言う人が
「私にお願いですか?」
「そうだ」
こんな私に何でもできちゃいそうな人が私にお願いだなんて。
「何事ですか?」
「そうだね」
「折敷七瀬、神南奏、日高咲姫、美原優この4人が君たちと同じ学年として今年入学してきたんだが…」
やっぱり異世界に呼ばれたからには、それなりの使者として凄いことするのかなぁって思っていた。
そう、この時の私はまだ……。
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