視線の先

貴方を見ていた。

風になびく髪がきれいだなと、いつも思っていた。

少し色の薄い猫の毛のような髪。

いつか触ってみたいと夢見ていた。

ふわふわかな、さらさらかな。

想像しては一人瞼の裏にあなたの姿を映していた。


貴方のことは何も知らない。

名前だけを呪文のように繰り返すだけで。

快活な声を聴くだけで。

何が好きなのか。

どんな音楽を聴くのか。

兄弟がいるのか。

どんなことで笑うのか。

いつか話しかけてみたいと思っていた。


黒い衣装で着飾った行列に混じることもできないくらい。

今もこれからも貴方は遠い。

永遠に交わらなくなってしまった未来を

もう夢見ることは出来ない。


ただ悲しいと嘆く前に。

貴方の髪に触れてみたかった。

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