プスィハローギア
リルム
第1話
半年ぶりに帰った実家。
ドアを開けた途端、今にも泣きだしそうな母親の顔が目に飛び込んできた。
「勇樹。もう私じゃ、どうにもならなくて・・・。」
こんな弱々しい母の顔を見るのは初めてだった。
電話でおおよその話は聞いていた。しかし、本当にそんなことが起こるのだろうか?
「正人は、まだ自分の部屋に?」
母親は小さく頷いた。
階段を登り部屋の前に立った。
「正人。兄さんだ。久しぶりに帰ってきた。入っていいか?」
そう言ってドアを叩く。
すると部屋の中から絶叫する声が響いた。言葉にならぬ言葉。この声は本当に弟の声なのか?
「正人、開けるぞ。」
ドアノブを回すも中からカギが閉められている。部屋の中から何かがドアに投げつけられる音がした。
「来るな!助けてくれ!助けて!助けて!」
ありったけの声で叫びながら激しく暴れまわっている様子。
「かぁさん。ドアを壊すぞ!」
勇樹は、返事を待つことなく、力いっぱいドアに向かって体当たりをした。鍵は壊れ、勢いよくドアが開く。次の瞬間、弟の正人と目があった。口を大きく開け、動きを止めて兄の目を見つめる。すると次の瞬間、白目を剥いて膝から崩れ落ちた。
「正人、大丈夫か。いったいどうしたっていうんだ。」
勇樹は弟を抱きかかえ質問するが弟は意識を失っており答えることはなかった。やがて、弟が失禁していることに気が付いた。そして、その後、激しく体を痙攣させ始める。
「かぁさん。救急車。急いで救急車呼んでくれ!正人が!」
慌てて階段を駆け上がってきた母親は、弟の様子を見て過呼吸のような状態でへたり込んでしまった。勇樹は、ポケットからスマートフォンを取り出すと「落ち着け」と小さく自分に言い聞かせ救急車を呼んだ・・・。
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