第231話 レイスとの攻防
――KYYYYYY
イナリがレイスと呼んでいた黒い影の幽霊が、甲高い叫び声と共に迫ってくる。
もう少しで追いつかれる! という所までレイスが迫って来ると、イナリの手が一瞬ブレた。
イナリが何かしたと思うんだけど、レイスの身体が上下に真っ二つに斬れ……すぐにくっついた。
「えぇっ!? 普通は今のでやつっけられるでしょ!? ちょっとズルくないっ!?」
「まぁ幽霊系の不死の魔物だからな。あれで終わるなら、とっくに終わらせてアニエスたちの所へ戻っておる」
「そ、そっか。イナリなら、確かにそうね」
「復活出来ない程の攻撃を、一撃で決められれば良いのだが、我の力は闇の力。残念ながら不死系とは相性が悪く、あまり有効な攻撃ではないのだ」
な、なるほど。以前にファイアー・ドレイクと戦った時は、私の水魔法が凄く効いたもんね。
相性か……
「ねぇ、イナリ。神水は、魔の力を浄化する効果があったし、魔物化した植物を元に戻す事も出来た。神水であのお化けを倒せないかな?」
「ふむ。やってみる価値はあるが……アニエスは大丈夫なのか?」
「え、えぇ。み、見えているお化けなら、まだ大丈夫かも。見えないお化けは無理だけど」
イナリに抱えられながら妖精の杖を取り出すと、水魔法で神水を出す。
依然として追いかけて来るレイスに向けて神水を……避けたっ!?
「ウソ……避けられた」
「だがそれは、アニエスの神水が有効だという事を示しているとも言えるな」
「そっか。じゃあ、もうちょっと頑張ってみる!」
それから、イナリが私とコリンを抱えながら森の中を駆け抜け、私が何度もレイスに神水を放つ。
だけど、神水を右へ左へと操っているにも関わらず、レイスの方が動きが速く、避けられる。
「今更だけど、相手はお化けで、私たちを抱えているとはいえ、イナリのスピードに追いつけるくらいに動きが素早いのよね。どうやって当てれば……」
「お姉ちゃん。船で鳥さんたちと戦った事を思い出してよ。相手の行動を読むんだよー!」
「あっ! なるほど! やってみる!」
コリンが言っているのは、海の国タリアナから火の国アトロパテへ船で移動していた時に、鳥の魔物が集団で襲ってきた時の事ね。
あの時も攻撃が当たらないって話をして、相手が避けられない攻撃をしたのよね。
今回は……これならどうっ!?
「えーいっ!」
「お姉ちゃん、凄い! それなら……えぇっ!? 今のもダメなのっ!?」
コリンのアドバイスから、神水を木の枝に当ててシャワーみたいに拡散させたんだけど、レイスが細かい神水のシャワーに突っ込む直前でしっかり制止した。
これでもダメなら、一体どうすれば……そうだっ!
「コリン! 今すぐ矢を射って! レイスに!」
「え!? う、うん!」
幸いここは森の中で、木の枝は沢山ある。
だから、別の木にも神水を当て、逃げられる場所を制限したところへ、コリンが矢を放つ。
神水のシャワーを浴びた矢は、私の神水シャワーによって後退するしかないレイスの身体を貫き、大きな穴が開く。
だけど、先程イナリが身体を分断した時とは違い、その穴が元に戻らない。
その上、ダメージが大きいのか、動きがかなり鈍くなっているので、再び水魔法で神水を操る。
「今度こそ! いっけーっ!」
妖精の杖で操作した大量の神水がレイスに降り注ぐと、断末魔のような悲鳴と共に消滅した。
「やった! これは……レイスを倒したのよね!?」
「うむ。アニエスの神水を浴び、完全に存在が消滅しておる」
「お姉ちゃん、凄ーい! やったね!」
物凄く苦手なお化けの魔物だけど、イナリとコリンのおかげで、何とか倒す事が出来た。
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