婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?
向原 行人
第6章 太陽の聖女と星の聖女
第225話 アニエスの気になる何か
「では、ソフィアさん。ユリアさん。行ってきますね」
「あぁ、頑張っておいで」
「アニエス様なら、きっと大丈夫ですよ!」
ユリアさんの言葉にちょっとプレッシャーを感じつつ、朝から薬師試験を受ける為にフランセーズへ戻る事に。
貸切馬車に乗り、一路南へ。
「えっと、この草は根っこに解熱効果があって、こっちの木は乾燥させると毒消しの効果が……」
「うわぁ。お姉ちゃん、大変そう。普通にA級を目指すなら、実績だけで良いんだよね? いきなりA級に飛び級しようとすると、試験が増えちゃうんだね」
「コリンよ。今はそっとしておくのだ」
コリンとイナリの声が聞こえたような気がしたけど、ソフィアさんに貰ったメモを見ながら、馬車の中で筆記試験対策の勉強に励む。
実技だけなら、間違いなく通るってソフィアさんに太鼓判を押してもらったけど、筆記試験は毎回問題が変わるらしくて、何とも言えないと言われてしまった。
まぁいつも同じ問題だったら、誰か受験した人に聞けば、問題がわかっちゃうもんね。
そのまま勉強を続けていると、馬車の御者さんが話し掛けてきた。
「お客さん。一旦、そこの街で馬を休憩させたいんですが、良いですか?」
「はい。大丈夫です。……私たちも昼食にしましょうか」
「やったー!」
ご飯と聞いて喜ぶコリンを微笑ましく思いながら、私も勉強用のメモを一旦ポケットにしまう。
何事も根を詰め過ぎは良くないわよね。
大きくノビて、馬車から外の景色を見てみると……変な感じがする。
あ……勉強に集中していて全く気付けなかったけど、ここはドードレックの街だ!
この街を通る度に変な感じが……って、今回はこの街に立ち寄るのね。
変な感じがどんどん強くなっていくけど……本当にこれは何なのだろうか。
「お客さん。では、私は馬を休ませてきますので、少しお待ち願います」
「わかりました」
御者さんに言われ、馬車から降りたけど……うーん。やっぱり変!
こんな変な事になるのは、この街だけだし、もしかして何かあるの!?
「ねぇイナリ……イナリ?」
「……む? すまぬ。どうしたのだ?」
イナリがずっと西の方に目を向けて、ぼーっとしていた気がする。
イナリのこんな様子は珍しい気がするんだけど……そういえば、馬車でもこの街を見ていたわね。
「あのね、この街に居るとちょっと変な感じがして……何かあるのかな?」
「……ううむ。まぁその……何と言えば良いだろうか」
「イナリ? 何だか歯切れが悪いわね」
普段は言い難い事でもハッキリ言うイナリが、どういう訳か何かを言わずにいる。
何だろう。逆に気になっちゃうんだけど。
「イナリ。何かあるなら言って良いわよ?」
「むぅ。アニエスがそうまで言うのであれば話すが……この街には何かが居るようだ。だが、それはおそらく……いや、調べてみないと分からぬな」
うーん。また何か濁されたような気がしなくもない。
だけど、やっぱりそんな事を言われたら気になってしまう。
「じゃあ、その何かを調べてみる?」
「ふむ。我は構わぬが、その……アニエスの苦手なオバケとやらの可能性もあるぞ?」
「あ、明るい内なら大丈夫よ。流石に夜はイヤだけど」
「では、少しだけ調べてみるか。アニエスの事を考えると、暗くなる前にこの街を出た方が良いだろうからな」
お、お昼ならオバケも出ないハズよね?
だ、だから、今なら大丈夫よ……たぶん。
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