第13話 ぴすとる

その日、転生課に激震が走る。


「おらあ!こいつの命が惜しければ、俺を元の日本に返しやがれ!」

「ひーっ!助けてくださいっス!」


卯月が人質に取られる。

頭に押し付けられたピストル。


今日のお客様は、どうやら元極道の方らしく、身に着けていたピストルごと転生課に飛ばされたようだった。

本来ならこんなことはないはずなのに。火葬のとき、ピストルごと燃やされでもしたのだろうか。


「落ち着いてください、藤堂さん。原則として日本に帰れることはありません。もう貴方様は火葬されております!」


「うるせー!」


バキューン


天井に向けて撃ち放つ。


「ひいいい!やめてくださいっス~!><」


いつのまに卯月は人質に取られたんだろう。トロいしチョロインだからな~卯月。


「助けてくださいっス~!先輩~」

「黙ってろ!死にてえのか!」


あ~、ピストルで頭ぐりぐりされとる。


「いた、いたたた!やめてほしいっス~」


「なぜあなたは元の世界に戻りたいんですか?」

「俺はなあ!ようやく組を抜けて自由になったんだ!嫁にも迷惑かけた!これからはまっとうに生きるって決めたんだ!それなのに!なんなんだここは!転生だと!?

俺は死んでねえ!だから帰るんだ!」


「今の貴方の行動は、遺してきた奥様が喜ぶとお思いですか?」


「生きてなきゃ悲しむだけだろうが!」


「藤堂さまには、新たな生を得る権利があります。ここでこれ以上暴れますと、転生する権利すら失われる可能性があります。」

「嫁や娘がいない新たな生になんの意味がある!」


「あなたはもう死んだのです。受け入れてください。」


それでも諦めそうにない藤堂さん。これはもうだめだ。


「貴方の転生先は 魔国ガルフバーン。記憶もリセットして、どうぞそちらで長生きしてください。スキルは【ナァフ】【魔力探知】です。」


激しい水流が現れ藤堂さんを飲み込んでいく。


「わーっぷ!自分は関係ないっス!離してくださいっす~」


這う這うの体で抜け出す卯月。

逃げるのは上手いなこの子。




「ふむ。なぜピストルが一緒に転生課に来たか、調べる必要がありそうですね。」


課長がその場に遺ったピストルを拾い上げて言う。


「ひゃー、酷い目に会ったっすよ」

「卯月くん、無事でよかったね」

「うえーん。課長!労災下りないっすかねえ?」

「撃たれてないから下りないだろうねェ」


事もなげに課長は言うが…


「いくら私でも、撃たれたら痛いっすよ~」


転生課の面々は死なない。ピストル程度の脅しには屈しないのだ。


「こら卯月!なに人質ごっこしてるのよ。もっと早く抜け出せたでしょ?」


楓に怒られる卯月。


「だって~、先輩に助けてもらいたかったし~」


たいへん不純な動機でした。


「ふうん、じゃあ、助けられたお礼に、今日の飲みは卯月のおごりね。」

「ええ!そりゃないっすよ先輩!」



最近トラブル続きの転生課。いったい何が起こっているのか。


「ところであんな状態の人を魔国ガルフバーンに送っちゃって、あっちの転生課から苦情こないかしら…。」

「う…。」

「大丈夫じゃないっすかぁ?あっちについたときにはピストルないっすし~。」

「だといいけど。」


今日の明日香のメニューは日本酒「人殺し」とビーフジャーキー。

本人的にはばっちりマッチするらしい。

はじめから日本酒に行く辺り、今日もまたヤケ酒だろうと思われる。





今回の転生先コラボはイベント参加者の

作者 流々(るる)  様

七人の魔導士 ― 魔国ガルフバーン物語 ―

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889189341



どうか藤堂さんが幸せになりますように。


ご参加ありがとうございました。




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