第8話 大量殺人犯
異世界転生課。そこは、人が死んだあとの案内をする場所である。
今まで登場してきた人間はいい人たちだった。いわゆる天国にいけそうな人たちだった。
今日はそんなことなかった。地獄に落ちそうな人だって担当しなきゃいけないのだ。
「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、貴方のご要望はどんな世界ですか?」
「お?ここはどこだ?俺は死刑になったはずだろ?なんで生きてる?」
「溝口さま、貴方はまさしく絞首刑になりました。その後火葬され、この場所に案内されたわけです」
「ヘッ、ってことはここはあの世か。俺は地獄行きだろ?ほら、さっさと案内するがいいさ」
溝口。40代男性。現世で介護施設を襲い全員を殺傷。施設は火の海に包まれた。27人が死亡。8人が重体となった事件で死刑判決を受け。実行された。
この男はこの介護施設の元職員で、「うらみがあった」と供述していた。
「地獄はもう何年も前に閉鎖されました。貴方には異世界に転生していただきます」
「ほう。異世界にね。俺みたいなヤツにはなにか罰があるんじゃねえのか?」
「貴方の罪は、死刑が執行されることで、罰は受けたと判断されます。溝口さまは新しい人生を好きに選んでよいのです」
それを聞いてハッとした顔をする溝口さん。
「いいのか?俺はまた異世界とやらでもヒト殺しをするかもしれねえんだぞ?」
「貴方さまは、異世界でまだ人を殺したいとお思いですか?」
淡々と聞く明日香。
「…そうかもしれねえ。俺はあんなにたくさん人を殺したんだ。手についた血の匂いは忘れられない」
「ではどうでしょう。次の貴方の転生先はアーキャリウッド。内戦と外戦の多く続く世界にいたします。ここなら、貴方の殺しの経験を活かせます。」
「ははははは!戦争でもっとたくさん人を殺せってか。いいぜ。ひたすら殺してやるよ。」
「スキルは【聖騎士】。国を守り、ほんとうの悪を斬ることが出来ます。」
あなたはこれから、英雄にならなければなりません。
「英雄ね。なれるのかな?こんな俺に」
「なれます。なってもらわなければ、貴方によって殺された27人はまたアーキャリウッドで殺されるでしょう。貴方が奪った命、今度は必ず守ってあげてください」
「はッははははは!コイツは地獄より厳しいんじゃないか?そうか!殺したあいつらは先に異世界で待ってんのか!笑えるぜ」
黒い霧によって姿を消していく溝口さん。
「行ったわね。溝口。」
楓が話しかけてくる。
「ええ。これで27人の無念が晴らされるわ」
「【聖騎士】のスキルなら罪のない一般人は殺せない制約があるから、次は間違いは起こさないわね。」
「ほんとですよ先輩ー。27人が一気に燃やされて、同時に転生課にきたときはどうなるかと思いましたよ」
「私たちの仕事をパンクさせた罪は異世界で償ってもらいます」
【聖騎士】スキルを持った溝口は、27人とともに新国家を築き、大国となっていくのだが、そんな話は転生課には臨時ボーナス程度の認知度でしかない。
続く
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