はーい、ここは異世界転生課です!

松田ゆさく

第1話 いるんですよね、こういう人

「あれ…私は、、ここはどこだ!?」


40代後半ほどの男性がいらっしゃいました。ご挨拶をしましょう。


「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、石坂様のご要望はどんな世界ですか?」


黒のワンピーススーツを着込んだ茶髪の巨乳が元気よく挨拶?する。


「転生?何を言っているんだ?私はさっきまで病室にいたはずだ。心筋梗塞の診断で入院してたんだ!どこだここは?」


まさに血相を変えて、唾を飛ばして巨乳に対して詰め寄る。

市役所の窓口のようなところに立っていることに男性は気づいた。


「はい!異世界転生課です。残念ながら石坂様は、お亡くなりになったみたいなんです。なので!次の世界の転生先をどうするか!ここで相談承ります!申し遅れました。私、担当官の如月明日香と申します。よろしくお願いいたします。」


元気よく答える明日香。今日の笑顔はいつにも増して満点であった。


「し、死んだ?そんなわけあるか!?手術は成功して、一般病棟だったんだぞ!」


今度は崩れ泣き始めた。


「いやー、いわゆる医療事故みたいです。看護婦さんが間違った薬品を投与しちゃったみたいで。」


目を泳がせている明日香。悪いのは看護婦であって、明日香ではないのに、自分が悪いような感覚になっている。


「そんな…私にはまだ中学生になったばかりの娘がいるんだ。こんなところで死んでられるか!」


怒りに顔を赤くする石坂さん。なんてかわいそうなんでしょう。


「そういわれましても、石坂さんがここにいるということはもう亡くなっていて、葬儀まで済んでいますので、戻れませんよ?」


キョトンとした顔でとんでもないことを言う明日香。


「…そうか。じゃあ、ここは、あの世だってのかい?ずいぶんお役所の窓口ぽくなっているね。」


そう言って辺りを見回す石坂。


「ええ、地獄とか天国とか廃止になったんですよー。定員オーバーになっちゃって。今後は異世界を含めた輪廻転生で地球の増えすぎた人口を減らそうってことになりました~。」


こともなげに簡潔に説明する明日香。


「はァ~…地獄はいいとして、天国に行けないのはなんだか複雑な気分です。」

「ご心配なく!生前の善行に基づいて転生先の難易度が選ばれます!石坂さんは、イイ人だったみたいなので、そこそこ平和な世界に送られるみたいですよ!」


なんだかとっても嬉しそうな明日香。ちょっと安心する石坂。


「それで~、私は、どんな世界にいくんでしょうか。」


おずおずと聞いてみる石坂。もぅこうなったら先に話を進めるしかない。


「はい~。剣と魔法のファンタジー世界ですね!どうやら魔王がいるみたいなんで、可能ならやっつけちゃってください。」


「私は、生きてる間喧嘩もしたことがないんですが、大丈夫ですか?」


手のひらをグーパーして自信無げに聞く。


「いえいえ、これからまた1から生まれ変わるので、生きてる間にいろいろあるんじゃないですかね。」


なにがしかを明日香は紙に記入していく。


「心配なら、ついでに一個、スキルつけときますね。えーっと【喧嘩lv1】っと。これで喧嘩するほど強くなっていきますよ~。」


ニコニコしながら書類のスキル欄を埋めていく。


「え?強くなっていくの?もしかして私が魔王を倒さなきゃだめなの?」


「あ、倒してもらっても構いませんよ~。ただ、無駄に死なないでくださいね。あっちの世界は人間が足りないので、二度とこの課に戻ってくることなく、あっちの世界で輪廻転生が始まりますから。もう私とも会えませんよ~。」


保険のセールスレディみたいにすらすらと説明して最後にハンコを押す。


「はい。転生先、グノーラバーンへの手続きは完了しました。」


書類を片付け始める明日香。


ぐにゃりと石坂の足元がうねる。

え?向かい方これなの?ドアとかないの~!?とか言いながら落ちてゆく。

すぽんっという音とともに元あった場所が復元する。

もうそこには石坂はいない



「ふーっ。終わった終わった、今日の作業完了~。」

「おつかれ~」

「おつかれさま~」

定時になってみんな解散となった。


「明日香、飲みに行かない?」


黒のワンピーススーツに灰色の髪をした貧乳が話しかける。


「お、いいね楓。今日こそ飲み比べ勝負に勝つぞー!」

「はっはっはっ、まだまだ明日香には負けないよ。」


2人は飲み屋街に消えていく。

彼女らの仕事は、異世界転生課。

死んだ人間を異世界へ飛ばす。

貴方もいつか、彼女らの世話になるやもしれませんよ。


続く





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