第7話

「俺は、昔からずっと、あなたが好きです。でも、記憶がないらしいので、無理にとは言いません」


「私は」


 私は誰。私はしにたい。私はみんなといる。私は。


 私は。


「あっ」


 結婚式で流れるような音楽が、車のほうから流れ出す。


「あ、いや、ごめんなさいタイミングが早かった」


「音声さんっ」


「お前っ、今じゃねえだろうがっ」


「いいえ」


 この音。


 聴いたことがある。


「もう記憶は、戻らない。わたしが、今、いなくなっても」


 この曲。私の好きな。


「私の好きな曲。結婚式用に、アレンジされてる」


「え、ええ。まあ。タイミング早かったかなやっぱり」


「いいえ。音声さん。このタイミングで合ってます。私は。あなたが好きです。私が、いま、しぬとしても。それでも」


 それでも。


「あなたが、好きです」

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