第5話
昔から。
いや。
たぶん生まれたときから。
しにたかった。
いなくなりたい。存在を、消してしまいたい。
とにかく、それだけを考えて生きてきた。
誰かに連れられて行った病院で、紙とペンを渡されて。なんでもいいから、描いてくださいといわれたのが、始まりだった。絵を描いて、物語を作るのが、楽しくて。
たくさん、描いた。
売れる作品だったらしくて、お金に困ることはなくなった。
でも、しにたいのは、変わらなかった。
家族がいないから。
作品のなかに生きすぎているから。
子供の頃の記憶を、喪失しているから。
しにたいのは、そういう理由なのかなと、自分でなんとなく思う。
彼に出会って。劇団を作って。みんなと暮らして。
それでも。
しにたいのは、変わらない。
夕陽で、気が気付いた。
知らない場所。息が切れた、自分。ずっと走っていたらしい。
「どこだろう、ここ」
どこでも、いいや。
しねるなら。
どこでも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます