第2話

 みんながお昼ごはんを食べに行っている間に、届いたラメを舞台に貼っていった。


 たぶん、雑貨屋とかに普通にある貼るタイプのきらきらしたやつ。


「ここから」


 演者さんの立ち位置に貼って。


「ここまで」


 演者さんが出れるぎりぎりの舞台の前まで貼って。


「よし」


 良い感じになった。これなら、綺麗になるかもしれない。


「ごはんですよ」


「うわっ」


 後ろから、甘い声。


「そんなに驚かれても」


 ふりかえると、端正な顔。


「いるとは思わなくて。ごめんなさい」


 おにぎり。渡される。


 観客席に座って、食べはじめる。この劇場は、上演中の飲食も自由。年齢制限もない。

 音声さんが特殊な機材を両端に設置しているので、上演中に赤ちゃんが泣いても、音声加工でなんとかできる。


「おいしい」


 彼の持ってくるごはんは、いつも、おいしい。


「あ」


 おにぎりの持ってたところが輝いてる。


「ちょっと手を洗ってきます」


 おにぎりを置いて、トイレへ。


「あら、脚本ちゃん」


「掃除のおねえさん」


 このおねえさんが、たぶん、彼の次にすごい。夫婦で、この劇場を毎日ぴかぴかにしている。備品の管理も。トイレだって、たぶんここの周りではいちばん綺麗だし、最新式。なんかメーカーとプライオリティなんたらとかいう契約を結んでいるらしい。


「どうなの。進展は」


「最高の舞台になりそうです」


 いつだって、ここの舞台は最高だ。テレビに映らなくても、売れようとしなくても、これだけの優しくて暖かいものが詰まっている。


「いや、そっちじゃなくて」


「え?」


「彼とは、うまくいってるの?」


「うまく?」

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