最強キャラドリームデスマッチ(コラボ企画)

戯言遣いの偽物

夏目潤vsアリナ!(vsシャルロッテお嬢様)

『READY⋯⋯FIGHT!!』


「⋯⋯」


  だだっ広い青々とした草原が広がっている。四方どこを見ても地平線の先まで草原が続いている。

 そんな中、ぼうっと突っ立っている女がいた。彼女は真紅であった。髪も瞳もパンツルックスーツもヒールも全て赤。赤でないのは白目とワイシャツと肌くらいである。スタイルが抜群に良く、顔も目つきが少し悪いこと以外は素晴らしく美人であった。彼女の名は夏目潤なつめじゅん。オカルトが常識となった混沌世界で異能力がないながらも、能力者や悪魔、怪物に邪神すらその拳で沈めてきた最強と名高い何でも屋である。


「⋯⋯あー、状況を整理するか。確かアタシが珍しく暇してたら転移させられたんだったな?人はアタシ含めて9人。人外が多かったかな?集めたっぽい奴──『主催者』としよう。そいつは『異世界の最強を集めてトーナメントをする』とか言ってたな。アタシは第二ブロック。初戦は⋯⋯えー、なんだっけ?そう!アリナ。アリナ・イヴァノブナ・プラスコーヴィアちゃんだったな?第一試合の時、二人減っていたから多分そいつらと同じように転移させられたんだろうな。ということはここはバトルフィールドってわけかい?」


 そんなことを呟き頭を整理しながら、スーツの内ポケットや隠しポケットを探る。


「よし、もしもの時の秘密兵器は無くなってないな?『主催者』が言ったルールじゃ死亡、気絶、ギブアップで勝負有りって話だが、こりゃ実質なんでもありの殺し合いじゃねぇか。まっ、アタシはほぼ毎日だがな!ハハッ!さてさて、アリナちゃんはアタシを楽しませてくれるかな?」


 そう言って笑った潤はやっと一歩踏み出した。草を踏み折り後ろに小径を作りながら突き進む。


「ふんふふん〜ふんふんふ〜!⋯⋯いるな?」


 しばらく鼻歌を歌いながら前進していた潤はいきなり立ち止まった。瞳孔が開き口角が釣り上がり、ニィッ⋯⋯と笑った。彼女の世界では向かうところ負けなしの潤にとって異世界で最強と名乗るライバルを相手取るのは最高の喜びであった。つまりワクワクしているのである。

 息を吐き、目を閉じて集中する。敵が何をしてくるかわからない以上、闇雲に探すより相手がアクションを起こす雰囲気を己の感で察知した方が楽であると潤は考えている。


「⋯⋯後ろぉ!!」


 跳んだ。小さい溜めから大地を強く蹴り、後ろから飛んできた何かを避けるようにバク転を行う。体操選手のよう、或いはそれ以上に美しい身のこなしであった。さらに背中側を通り過ぎる何かを指先で掴み着地する。そのまま足を引き、振り向きざまに何かを持っていない方の手を握りしめ一気に振り抜く。ゴウッと風切音を唸らせ虚空を殴った拳は強烈な衝撃波を起こした。パワーを調整したのか地形破壊まではしていないがそれでも草をなぎ倒し、20メートルほどの道を作り出す。しかし何も出てこなかった。


「んー、もうちょい遠かったか?もしくは移動したか⋯⋯?まっ、そう簡単に吹き飛んでもらっても困るがな。」


 首をゴキゴキと鳴らし、笑う潤。思い出したかのように掴んだ何かを確認する。


「矢⋯⋯か。木や竹じゃねぇな?おそらくカーボン。異世界だからアタシらの世界にない成分かもしれねぇな。瞳ちゃんに渡したら喜ぶかもな。まぁそんなこと言ってる場合じゃないか。合計3本飛んでたな。まぁまぁやるじゃない?⋯⋯おらよぉ!!」


 徐に矢を投げた。大きく振りかぶって投擲された矢は、ヒゥンという高い風切音を立てて草原の中へ消えた。


「ひゃあ!!」


 叫び声がして人が飛び出てきた。

 ショートカット金髪金眼の小さい女の子だった。赤いどこかの軍服を着ている。矢筒を背負い黒いコンジットボウを持っているので彼女が矢を射った張本人でほぼ間違いないだろう。そして彼女の髪の間から横に違った耳がのぞいている。


「⋯⋯エルフか?もしくはハーフエルフか。まぁどちらでもいいか。おい、確か⋯⋯アリナちゃん!」


「⋯⋯」


 アリナは答えない。わざとではないらしい。顔が青を通り越して真っ白になっていて、コンジットボウを持っている手がブルブル震えている。


「あー、答えなくていい。必要ないだろう?君も軍人だろ?アタシは軍人じゃないけど色々死線潜り抜けてきてんだ。さぁ⋯⋯やりあおうやぁ!!」


 ただ、相手の状態なぞ潤にはどうでもいいことだ。敵が出てきたことが重要なのである。ファイティングポーズはとらない。あくまで自然体でアリナの方へ歩を進めはじめた。ただ1歩ずつアリナへ近づくだけ。


「こ⋯⋯来ないで!!」


 それだけでアリナは恐怖に震えた。それでも彼女は腐っても軍人である。バックステップで距離を取りつ矢を同時に3本射る。

 矢が発射されたと同時に潤は加速する。


 1歩目。大地を思いっきり踏んで蹴り出す。


 2歩目。飛んできた矢を上から足で踏んで落としつつさらに踏み出す。


 3歩目を踏んだ時点でアリナを自分の射程に捉えた。


「⋯⋯えっ⋯⋯」


 アリナが驚くも無理もない。アリナと潤の間は常人なら3歩程度じゃ詰められる距離じゃない。それに身軽なアリナでも走りながら飛んでくる矢を踏みつけるなんて無理である。

 驚くアリナをよそに潤はニヤリと笑い、拳を握る。体を捻って拳を引き、足を踏みしめて思いっきり拳を突き出す。


「シャオラァ!!」


「ひぃぃ!!!」


「⋯⋯なーんてな。」


  アリナはとっさに顔を手で覆って守ろうとする。しかし潤は手前で拳を止めた。ゴウッと風が巻き起こり、金髪が激しくたなびく。


「逃げるならもっと死ぬ気で逃げな?アタシはそれほど鬼じゃねぇから何も地の果てまで追っかけようとは思わねぇ。だがな、やるんだったら覚悟決めな?あん?まぁ、アタシとしてはやりあいたいけどなぁ?」


 拳を引き、代わりに顔を近づけて笑う潤。それとは対照的に目に涙を溜め、ブルブル震えているアリナ。やがてコンジットボウを捨て、両手を上げた。


「こ⋯⋯降参⋯⋯しますぅ⋯⋯」


『GAME SET!!WINNER!夏目潤!!』


「はぁ⋯⋯殴り合い出来なかったなぁ⋯⋯まぁ、仕事でもないのに怖がってる敵を殴り倒しても面白くないしな。次の敵に期待するか!」 


 少し残念そうだったが、潤は笑っていた。彼女の興味は次の相手に変わったようだ。




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