第4話 奴隷娼婦 ミミ
私の名前はミミ。農村の出身で、出稼ぎのため、同じ村のナナとモモと一緒に都市に向かう途中で盗賊に攫われた。
盗賊のアジトに暫く閉じ込められていた私たちであったが、今日、アジトから引き出され、奴隷商に売られてしまった。
私たちは素直にそれに従い、密かに逃げ出す機会を窺っていた。
逃げ出すなら、確実に助かる瞬間を狙わなければならない。
今、森に逃げても捕まえられるのが落ちだ。
仮に逃げ延びたとしても、森には魔獣もいる。手ぶらの私たちが、生きて街までたどり着けるわけがない。
奴隷商の馬車に揺られること半日程で、大きな街に到着した。
門では検問が行われている。
ここで、私たちは動いた。なぜか緩んでいた拘束を解いて馬車から逃げ出したのだ。
「助けてください。私達、攫われて連れてこられたんです」
私達は門番に助けを求めた。
「エリック様。そいつらを捕まえてください。そいつらは、農村で買い付けてきた奴隷です。ほら、ちゃんと書類もあります」
門番はエリックというらしい。奴隷商の求めに応じて、他の門番にも私たちを拘束するよう命令した。
「そんな、私たちは売られてきたのでなく攫われたんです」
「黙れ。ちゃんと書類は確認した。お前たちは親に売られたんだ。諦めろ」
「エリック様、ありがとうございます。捕まえていただいたお礼は後ほど」
「なに、これも仕事の内だ。気持ちだけで構わんぞ。気持ちだけでな」
「はい、承知いたしました。さあ、お前たちはおとなしく馬車に乗れ」
私たちにとって、逃げ出す最高のチャンスだったはずが、失敗に終わってしまった。まさか門番が奴隷商に買収されていたとは、私たちは誰も考えていなかった。
その点、奴隷商は抜かりがない。農村から買い取ったという偽造書類を用意していた。
この国では、奴隷を買い付けること自体は違法ではないが、その相手が盗賊となれば、それは違法である。
脱出に失敗し、私達を乗せた馬車は門を抜け、奴隷商の館に到着した。
そこで降ろされた私たちは、館の一室に連れ込まれた。
そこにあったのは、一見ギロチンのような巨大な装置だった。
何に使うのだろうと訝しんで見ていると、私は首をそこに突っ込まれた。
まさか買い付けたばかりの私たちの首を刎ねるようなことはないだろうが、見た目がギロチンだ。私は泣き叫び、他の二人も青い顔をしている。
「ガシャン」
「ギャー!」
大きな音がした。思わず叫び声を上げたが、私の首は飛ばされることはなく、代わりに継ぎ目のない金属製の首輪が私の首に装着されていた。そして額には奴隷紋が刻まれている。
私が終わると、続いてナナとモモも首輪を付けられた。
首輪にはシリアル番号が降られており、魔法で居場所を特定できること、無理に外せば奴隷紋が反応し、苦しみながら死ぬことになると説明された。
これで、私たちは逃げ出すことができなくなった。そのためだろう。私たちは拘束を解かれ、別室に連れて行かれた。
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奴隷商の部屋に残された俺を男が拾い上げる。
「このロープは新品か?やけに綺麗だな。これなら、あいつらを娼館に売る時にそのまま使えるか」
俺は纏められて、壁のフックに引っ掛けられた。そして、そのまま三日間放置されることになった。
三日後、俺は再び娘達を拘束していた。
娘達が娼館に売られる日が来たようだ。
居場所を追跡できる奴隷の首輪があるとはいえ、逃げられれば、捕まえるのに手間が掛かる。流石に、外に出すときは拘束するようだ。
娘達は綺麗に磨き上げられ、シンプルだが清楚な服を着せられていた。しかし、当然、表情は晴れやかなものではない。だからといって、泣き叫ぶでもなく、既に諦めた無感情な表情をしていた。
娘達の娼館への引き渡しは何の問題もなく、滞りなく行われた。その際、俺も娘達と一緒に娼館に引き渡されることとなった。
そこで俺は見知った顔と出会った。マリーである。
なぜ俺を見つけた冒険者のマリーが、娼館で娼婦をしているのだろう。盗賊になったケントのことと併せて謎だらけである。
マリーは俺を見ると、何か感じるものがあったのだろう。鑑定魔法を俺にかけた。鈍感なケントとは大違いである。
「これは・・・」
「マリー、どうかしたかい」
マリーの呟きに娼館の主と思しき女性が気付き、マリーに尋ねた。
「そのロープ、多分、昔私が持っていた魔道具です」
「このロープが魔道具なのかい」
「試してみていいですか」
「何をするんだい。危なくなければ構わないけど」
「それじゃあ、見ててください。私の髪をハーフアップに結んで」
マリーの命令で俺は「ヒモ」の状態になり、マリーの髪をハーフアップにまとめ、リボン縛りをして奇麗に飾り立てた。
「おお、こりゃびっくりだ」
「どうです凄いでしょ」
「確かに凄いね。それで、この魔道具、他にも何かできるのかい」
「私が使っていたころは、髪飾りにしか使っていませんでしたが、今はいろいろできるようですよ。それに、教え込ませることもできます」
「そうなのかい。それはいい物を手に入れたね」
「おかあさん。気付いたのは私ですよ」
「わかってるよ。何が欲しいんだい。ドレスかい。アクセサリーかい」
「でしたら宝石で」
「宝石かい。わかったよ」
そこから俺のハッピーな桃色生活が始まった。
娼館の主が、俺を女体を縛り上げる「縄」として使い始めたのである。
希望する客に貸し出され、客は俺を使って女を縛っていく。時には、俺を鞭代わりにするやつまでいた。
お陰で「緊縛Lv.18」「鞭打ちLv.7」を獲得した。レベルもLv.62になった。
兎に角、裸の女を縛り上げるのはいい。至高のひと時だ。鞭打ちに使われるのは、こちらも痛いので勘弁願いたいのだが、それを差し引いてもここは最高だ。
今日も俺が娼館に来る切っ掛けとなったミミを縛りあげる。
両腕を後ろに組んで縛ったうえで、胸の上下を巻く。胸が強調されて何ともエロい。
そして上から吊るすのだ。
腹の出た中年のお客さんが、吊るされて自由を奪われたミミをいやらしい目で十分眺めてから、突いて撫でまわす。
「あ~ん、ダメです。そんなにしたら。わたし、いっちゃいます」
連れてこられたころが嘘のようにミミもノリノリである。
そういえば、最近は「ミナモ」トリオと呼ばれ、ミミ、ナナ、モモの三人は人気急上昇中だ。
ミミは小柄で可愛く、ロリコンに受けが良く。ナナや背が高く痩せ型で、モデルスタイルだ。モモはぽっちゃり型で、巨乳で一番縛り心地がいい。
悪く言えば、チビ、ガリ、デブだが、そこまでではない。顔は三人とも可愛いから、愛想がよくなれば人気が出るのも頷ける。
三人とも緊縛オッケーだから、貸出オプションの俺も大忙しだ。
そう、大忙しだった。だから、このままずっとここにいて、桃色生活をおくれるものと思っていた。
だが、それは長くは続かない儚い夢だった。
どこからか、俺が魔道具であることを聞きつけた男が、俺を買い取りたいとやって来たのだ。
俺としてはこの桃源郷を離れたくなかったが、俺にそれを拒むことはできなかった。自分の意思を伝えることができないのだから諦めるしかない。
マリーは俺を売るのに反対してくれたが、そのマリーも貴族に乞われて身請けされていった。
よく、マリーに亀甲縛りをして、鞭打ちしていた貴族にである。マリーの行く末が心配だが、俺にはどうすることもできない。
ミミたちも、惜しみながらも反対まではしなかった。
所詮、俺は道具にすぎないのである。
諦めるしかない。自分に無理矢理納得させて娼館を離れた。
とはいえ、買い取られていった先で地獄の日々が待っていようとは、この時の俺は全く考えていなかった。
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