自称メンヘラのヲタクで30前に突然我に返るか、進化してTikTokやりだすだろうシンデレラ
家庭の事情による貧困と継母からのDVにより王子様のお妃探しの舞踏会に行くことが出来なくなった可哀想なシンデレラ。
彼女が一人屋根裏部屋で泣いていると、ローブを着た推定年齢70歳代の白髪の老魔法使いが現れました。
何と深夜0時までの限定で、舞踏会に着ていくドレスや乗り物等の御膳立てをしてくれるそうです。
「でもアタシ、正直この歳だから若い子の好きなドレスが分からないのよねェ……」
悩む魔法使いを前に、シンデレラは顔を輝かせました。
「親切なおばあさま、私、着てみたかったお洋服があるんです!」
お城の舞踏会場では、主役の王子様がどこか気怠げな表情を浮かべていました。国ぐるみでお膳立てされた婚活のやり過ぎで、あらゆる女性が退屈に見えて仕方がないのです。
そんな舞踏会場に、一台の中古のNワゴン(走行距離12万キロ)がハイビームで乗り付けました。後ろのバンパーは前オーナーがぶつけたポールの形に凹んでいますが、コスパよしデザインよし、まん丸のヘッドライトが可愛らしく女子的にも申し分ない乗り物に違いありませんでした。
車内から爆音で流れる「I’m Your Treasure Box *あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。」をBGMに、助手席から現れたのは、すっかり自信を取り戻したシンデレラでした。
ハンドルを握る魔法使いもサムズアップで見送ってくれます。
ああ、なんということでしょう。
裸足に粗末なドレス姿だったシンデレラは、合皮の編み上げ厚底ブーツに、
袖が紫色で和服のゴスロリ服を身に付けていました。
手入れされていなかったボサボサの髪は、アシメの赤メッシュでカリッカリのストレートパーマにセットされています。
ちなみにお化粧は一切していません。顔を誤魔化さずにナチュラルな魅力で戦うのがシンデレラの信念だからです。
ざわめく舞踏会場で、右頬まで上がったウインクをするシンデレラと変化に飢えていた王子は、互いに一目惚れをして踊りを楽しみました。
そして例によって王子様は、突然城を去ったシンデレラが残した片方の合皮の編み上げ厚底ブーツの持ち主を国中で探し始めました。
翌日、シンデレラの家に合皮の編み上げ厚底ブーツを持ったお城の従者が現れましたが、継母一家は顔色を曇らせました。
「お母さま、私、何がどうとは言えないけどイヤよ」
継母一家がことごとく試し履きを辞退する中で、屋根裏部屋から躍り出てきたシンデレラはその合皮の編み上げ厚底ブーツに足を滑り込ませ、サイドチャックを上げました。
ジ……ジジ……。
そして見事履き上げ、王子様の妃の座を射止めました。
その後二人は結婚し、タイヤを鬼キャンにしたヴェルファイアでメガドンキに行き、毎週のようにMEGA盛りの肉を買ってバーベキューを地元の友だちとしたり、ゲーセンでアニメタイアップのパチンコを打ったりする等して、それなりに幸せに暮らしましたとさ。よかったね。
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