第2話
すでに上映中だった。スクリーンの明かりに、人の頭がぽつぽつと見えた。
……皆、映画館に来てたから、外に誰も居なかったんだ。
阿以子は納得すると、ドア付近の最後列に座った。
〈ならばなぜ、
字幕に
〈この村にはもう、若い女がおらぬからじゃ〉
長老らしき
すると、神主が観客のほうに顔を向けた。神主と目が合った阿以子はビクッとして目を伏せた。途端、前方からニューッと手が伸びてきて阿以子の腕を掴んだ。
「イヤーッ!」
阿以子は悲鳴と共に身を
「……イヤぁ。イヤだイヤだイヤだ……」
邪念を
(……もう、……駄目だ)
阿以子は気を失ってしまった。
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「――おい、女」
阿以子は男の声に目を覚ました。薄目を開けると、神主が見下ろしていた。
「ハッ」
「気がついたか?」
「……ここは?」
神主の背景を見ると、先刻の映画に出てきた神社があった。
「
身を起こしながら視線を落とすと、
「ヒャッ」
咄嗟に身を退くと、長老の後ろには、映画に出演していた老爺や老婆が勢揃いしていた。
(エッ! 嘘。……映画の中にいるの? まさか、そんなことはあり得ない)
阿以子は自分の状況に
(……じゃ、なぜ皆の視線が自分に向いてるの? ……単なる思い過ごし?)
そんなことを思っていると、
「女、来いッ!」
神主がいきなり阿以子の腕を掴んだ。
「イヤーッ!」
阿以子は後退りしながら、必死に抵抗した。
「若い女を供えねば、この村に災いをもたらすとの神のお告げがあったのじゃ。わしらを助けると思って
神主は尚も握力を増した。
(! ……さっき映画館で腕を掴んだのは、スクリーンの中から伸ばした神主の手!?)
「イヤーッ!」
「長老! お主も手伝えぃ」
「……神主さま、わしにはできませんだ。このおなごさんはよそ者ですだで」
「そんな悠長なことを言ってる暇はないッ! この村が災害に遭ってもいいのかッ?」
神主の言葉に、長老は老いた村人達を見回した。老い先短いことを覚悟するかのように村人達は哀しそうにうつ向いていた。……災害など無い穏やかな村で、皆を往生させてやりたい。そう思った長老は、
「すッ、すまぬ」
そう言って、もう一方の阿以子の腕を掴んだ。
「イヤーッ! 誰かー、助けてーッ!」
二人に腕を引っ張られた阿以子の体は、赤子のように、その抵抗を無力にしていた。
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