社畜の社畜による社畜のための異世界サバイバル

あめ玉

第1話 唯一無二

 神界しんかい庭園ていえんには、生命せいめい知恵ちええられている。知恵ちえは、堕落だらく破滅はめつ原因げんいんであり『のろわれし』とばれている。ルビーのような真紅しんくは『禁断きんだん果実かじつ』としょうされ、べることをきんじられている。


 べると、んでしまうから――


 『通説つうせつでは』そういうことになっている。


 果実かじつべると神々かみがみひとしき知識ちしき方法ほうほうとして自身じしんたましい消滅しょうめつさせる手順てじゅんのうきざまれる。

 うそをうそであると見抜みぬけるものでないと、知識ちしきただしく使つかうことはむずかしい。欲望よくぼうおぼれたもの知識ちしきあたえないための試練しれんとして、にせ情報じょうほうきざまれるのである。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 ある日、一人の天使が禁断の果実かじつを食べた。

 しかし、神々と等しき知識を得ようとはしなかった。


 ――『面倒臭い』から。


 腹を満たすために目の前にある果実かじつを食べた。ただそれだけのこと。その天使は何事に対しても無関心むかんしんで、理解力が欠如けつじょし『禁断の果実かじつ』という危険物きけんぶつける思考しこうすらも放棄ほうきしていた――


 結果的けっかてき果実かじつを食べたことにより脳に刻まれた膨大ぼうだいな知識は、一切の変化をもたらさなかった。


 しかし、神はそれを問題視もんだいしする。

 知恵の樹の実を食べても何も起きない前例、その存在は安寧あんねいを揺るがしかねない――不都合ふつごう前例ぜんれい排除はいじょするために記憶を封印ふういんし、魂を煉獄れんごく創造そうぞうした有機生命体ゆうきせいめいたい封入ふうにゅうする。


 無能むのうだから何もできないだろう――偏見へんけんによる思い込みが神の判断はんだんを鈍らせる。

 『創造そうぞう』と『魂の封入』方法を知る、無垢むくな者を目の届かない場所へ放ってしまったのである。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 天使は煉獄れんごく彷徨さまよった結果、自分以外の有機生命体は存在しないことを知る。

 記憶を封印されているため、神の存在を知らない。結果、自分自身が創造主そうぞうしゅであると認識する。


 何故か記憶にある、魂の転送方法。ただ、自身の体から別の有機生命体へ魂を移動させた際、現在魂が入っているうつわがどうなるかは知らない。


 おそらく以前の器は消失しょうしつしてしまったのだろう――転送方法は知っているのに、転送出来ないということはそういうことだと結論付ける。


 この器が最後の一つなのかもしれない。失ってから修復方法を考えても遅い。戻せる保証ほしょうが無い。唯一ゆいいつの有機生命である今の器を失わないために『思念体の複製ふくせい』方法の模索もさくし始める――


 何事に対しても無関心で、理解力が欠落けつらくしている――周囲が『無能無能』のレッテルをり、そのように扱い続けたからみなが望む『傀儡かいらい』になった。


 しかし神に記憶を『封印ふういんされた』ことにより、無能むのうでなければならない呪縛じゅばくから『解放かいほうされた』――

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