第13話 サイド領にて ⑤ 神猫様とハーシー
(ハーシーside)
マウンテンサイドに着いた翌日、円状の土地の真ん中辺りにセイマの指示通り祭壇を作り、更にその周りを囲む様に松明(たいまつ)を並べたら、私達の仕事は終わりだ。
後はセイマ殿下が地面に、魔法陣を描いていく。
皆んな、『流石は【聖人】様!』と感心していたが、私は知っている。
魔法陣に見せかけて、実は半分くらいはただの落書きだという事を……
【神降ろし(神猫降ろし)】が使える殿下は、実は補助の魔法陣は必要がない。
ただ単にパフォーマンスの為に描いているだけだ。
最初のうちは真面目に描いていたが、こうも広いと、おそらく途中から落書きになっている。
上から見ないと解らないのを良い事に、いったい何を描いているのやら?
日が暮れるまでに、いろいろ準備を整えた私達は松明に火をつけた後、殿下以外の者は全員外輪山の中にある、聖魔法で悪霊が入れない様になっている建物の中に避難した。
殿下は悪霊の殲滅を狙っている……
【神降し(神猫降ろし)】まで使って、殲滅出来ないとあっては神殿の沽券に関わるからなぁ。
普段はのほほんとしていて、頼りなさそうに見えるけど、神官としての腕は確かだ。
何しろ【聖人】で【勇者】だからな!
予定時間になり、殿下の除霊が始まった。
『除霊中は夜が明けるまで、絶対に建物から出ない様に!それと誰が来ても開けない様に!』
と厳命されているので、除霊の様子がどうなっているかわからないが、殿下の事だ、上手くやっているに違いない。
怒った猫の鳴き声と、物凄い音が聞こえるけど……
そして明け方近くになって、私達が避難している建物のドアがノックされた。
『皆さん…悪霊退治は終わりましたから、此処を開けてください。』
と殿下の声が聞こえて来たので、研究所の職員がドアを開けようとしたのを、私は咄嗟に止めた。
「殿下は『夜が明けるまで』と言われた!
まだ夜は明けてないし、それにお前は殿下じゃない!!」
盗賊の中には【声真似】のスキルを持つ者もいる、悪霊は盗賊の霊だからそんな手を使う奴が居てもおかしくない。
それに殿下なら……
『ウチの大好きなハーシーに何するニャ!!
お前で最後ニャ!
転生も出来ない様に消滅させてやるニャ~!!』
とこうなるからなぁ。
私は何故かミーチ様に物凄く気に入られているから、そのお怒りは凄まじいものだった。
コレは暫く大変だなぁ~。
ただでさえ重いのに、ミーチ様が入ったままだと完全に猫のつもりになってしまうから、お世話が……
こんな状態の殿下を大勢の人に見せる訳にはいかないから、もう暫く此処に滞在しないといけない。
夏休みが終わるまでに、学園に帰れるかな?
それに殿下に振り回されて、家で待ってる嫁さんにも会えてないし。
まぁ殿下に振り回されるのも、サイド領にいる今だけだ。
学園に戻れば、暫くは関わる事もないだろう。
何しろ殿下はユイナーダ王国一の【勇者】でアイドルだからお忙しいし……
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