第5話 【閑話】学生時代の思い出
私とハーシーはいわゆる幼馴染み。
7歳の時に年齢の近かった彼と城内にある、サイド伯爵の職場付近で知り合いました。
庭で迷子になっていたところを、私が助けられたのがきっかけです。
それからというもの、彼は何かと世話をやいてくれる様になりました。
しかし残念ながら、5歳の時に受けた【最初の祝福】で《聖魔法》が使える事がわかっていたので、10歳になったら神殿に修行に出る事になっていたので、彼と一緒に遊べたのは三年間くらい。
次に彼と会えたのは学園の高等部に入ってからでした。
神殿の修行だけでは将来旅に出た時や、治療院に勤める様になった時に、いろいろと困る事になりますからね。
それに《聖魔法》持ちの人が全員【聖人】【聖女】になれる訳ではありませんし。
中には様々な理由で還俗される方もいらっしゃいます。
ご実家の財力でご自分の治療院を持つ方。
ご実家が代々治療院で治療師になる方。
ご実家の跡を継ぐ為に還俗して【特進科】に入る方。
ご令嬢は【淑女科】に入ってそのまま嫁がれる方がけっこういます。
おそらく私が還俗する事は無いでしょうが……
私は身分的に、学園を卒業しないといけません。
私は三男なので騎士科・文官科・土木・建築科・練金科・魔術科の中から選択します。
【騎士科】は既に兄上が通っているし、騎士を目指している訳ではないから却下。
【文官科】は卒業後は神官になるし、直ぐ下の弟が宰相家に婿入りする為に入る予定なので却下。
各地を旅しながら、治水工事の指揮を取っている神官もいるので、【土木・建築科】を選ぼうとしたら、怒られました。
理由は五男以下が困るから、三男の私は遠慮しなくてはいけないそうです。
【練金科】はそもそも無理……
仕方がないので、【魔術科】を選択しました。
私は《聖魔法》以外の魔法も使えるので、自衛の為にも習う必要があるそうです。
放課後に行われる部活は自衛の為と、《聖魔法》の修行も兼ねて【武術部】に入りました。
【武術部】の部員は卒業後、冒険者を目指す者達がほとんどなので、とにかく実力主義。
私も最初のうちはよく怪我をして、自分で自分の治療をしていました。
そのおかげで、私には棒術と槍術の才能がある事がわかり、今でも凄く助かります。
いくら魔力が多くても、魔法にばかり頼っていては肝心な時に《魔法》が使えなかったら困りますからね。
そんなある日、『練金科で爆発事故が起き、怪我人が大勢出た!』という緊急の知らせが来たのです!
私は嫌な予感がして、すぐさま現場に向かいました。
現場は騒然としており、先に駆けつけていた《聖魔法》を使える学園生や保健医、勇気のある淑女科の学園生が治療にあたっています。
しかし、思いのほか重傷者が多く治療が間に合っていません。
私は倒れている人々を見て、アレを使う決意をしました。
我が血筋だけに伝わる《聖魔法》の秘術、【神猫憑き】!!
今回は《癒しの女神ナツキ様》をその身に降ろし、超強力な《聖魔法》エリアパーフェクトヒールを使う!
この秘術を使用すると、暫くたいへんな事になるのですが、そんな事を言っている場合にはありません。
まだ、使い慣れていないので範囲も狭くなるべく重症者の近くで使う必要があります。
その重傷者の中に、私は見つけてしまったのです。
我が心友、ハーシーの姿を!!
私は【神猫憑き】を使いました。
彼を死なせる訳にはいかない!
たった一人の心友ですから。
「エリアパーフェクトヒールにゃ!!」
【神猫憑き】の弊害……
それは…【神猫憑き】で降ろした神様が、なかなかお帰りにならない事。
お帰りにならないと、私の身体に猫耳と尻尾が生えたままになってしまうのです。
神々の世界は暇らしく、一度降ろすと満足するまで、私の身体から出て行かれない。
今回は大人しいナツキ様なので、カフェやケーキ屋である程度スイーツを食べると、ご満足頂けるのでまだ良い方でしょう。
前に【神猫憑き】でコウメ様を降ろしたら、一週間居座られた上に神殿内で、神官見習いの女性を脅して、不定行為をしようとしていた神官を《教育的指導》という名目で、私の身体を使って叩きのめしてしまったのです。
その時はまだ、私のレベルが低かった為、大した怪我ではなく神官はかすり傷で済みましたけど。
コウメ様はルールを守らない人には厳しい方です。
《法の女神様》ですから。
その直後にご満足頂けたのか、神界にお帰りになりましたがその所為で、状況の説明がとんでもなく面倒くさい事になりました。
因みに件の神官は当然破門されましたよ。
コウメ様に見つかる前にも、何度か同じ様な事を繰り返していた様ですね。
それはともかく、いくら《回復魔法》で傷が治っても、流れた血は元に戻りませんから、安静にしていなければなりません。
後は学園内にある病院にお任せしましょう。
ハーシーの事は心配ですけど、今の私の姿を見せる訳にはいきません……
彼が目覚める前にこの場を離れ様としましたが、どうやら遅かった様ですね。
ハーシーは無意識のうちに、私の尻尾を掴んでいたのです。
痛いからやめてほしい。
彼は無類の猫好きで、特に黒猫や白黒のブチ猫が大のお気に入り。
なので今の私は彼の好みなのです。
ハーシーの所為でナツキ様のご機嫌が悪くなり、『彼の奢りでお腹いっぱいスイーツを食べないと帰らにゃい!!』
そう言われて、10 日も居座られてしまいました。
私は10キロ太りました。
「うぅ…今月の小遣いがぁ~!」
ハーシーは今月分のお小遣いを、全部使い果たしてしまいました。
可哀想なので、私と一緒に食事をする事を条件に、来月のお小遣いが出るまで食事代を出す事にしたのです。
というのは建前で、私のダイエットに付き合わせている状態です。
ハーシーと一緒に居られるのも後約二年……
卒業したら、また暫く会えなくなります。
それまで少しでも一緒に居られますように……
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