異世界料理人〜せっかくなので異世界に転生しても料理を頑張ってみる話〜

月下 翠

第1話料理人

「ありがとうございました!」 最後のお客様が帰り、1日の締め作業に入る。

 テーブルを綺麗に拭き上げ、食器とグラスを洗い、店内を掃除する。

 そして、次の日に必要な食材を再確認し、仕込みや発注を終わらせる。

 

「おつかれさん、毎日頑張ってるな!」 

 ————大森 和也 お世話になっている店長だ。大雑把な性格だが彼の作る料理はどこか暖かく、食べる人みんなを笑顔にする。

「まかない、作ってやろうか?」


「今日は、大丈夫です。まだやりたいことがあるので」


「そうか、たまには早めに帰ってゆっくり体を休めろよ?」

 

 俺だって帰ってゆっくりしたいところだが、来月までに新メニューを考えて商品化するためには、そうそうゆっくりもして居られない。しかも今日はなんとなくいい料理が思いつきそうな気がしていたのだ。

......だが本当に気がしていただけだった。何も思いつかない。ここのところ一週間ずっとこんな調子が続いている。 


(さすがに眠たくなってきたな....)

気付けば、もう深夜四時だ。


(今日はこれぐらいにして帰ろうかな。いや、だめだもう少しでなにか思いつくはずだ。少しだけ休憩したらもう少し頑張ろう)


 徹夜を覚悟した俺は、厨房の折りたたみの椅子に少し腰掛けて休憩する事にした。だが疲労もたまり眠気も限界だったのだろう、少しだけ休憩するつもりが、眠ってしまっていた。


(っ!!やばっ!)

 寝るつもりなんか無かった俺は慌てて飛び起きた。

............すると目の前には、現実には有り得ないアニメや漫画なんかによく居そうな綺麗な銀髪の女性が奇妙な椅子に座ってこっちをじっと見下ろしていた。


 そして、状況を把握出来ずに戸惑っている俺に向かってこう言い放った。



 「貴方は、今この瞬間死にました」


 ————こうして、俺の人生は終わった。



 

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