第70話 設備カスタム


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お知らせ


8/12(月)10:00より、サーバーを止めない形でメンテナンス及びアップデートを行いました。


・追加、変更要素

 ・各街の冒険者ギルドにて、8/17(土)より開催される「大狩猟祭」の前日譚となるクエストを追加しました。詳しくはクエストボードまたは受付を参照してください。また、このクエストはクリアの成否はイベントに関係ありません。

 ・メニューのシステム欄より街中のセーフエリアでのみリスポーン地点を設定出来る機能を追加しました。このリスポーン地点は上書きしない限り別の街に移動しても維持されます。


・不具合の修正

 ・「剣術」スキルのアビリティ「アドバンススラッシュ」を発動した直後「槍術」スキルのアビリティ「インパクトピアス」でアビリティをキャンセルすると飛行出来る問題を修正しました。

 ・武器タイプが合致しないスキルのアビリティを発動出来る問題を修正しました。


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 昼食を食べてから少し休憩し、再びFFにログインすると2件のメッセージが届いていた。

 どうやらプレイしている間にアップデートとメンテナンスを行っていて、それが完了しているようだ。

 自室でうさ丸を撫でつつお知らせを確認していると、僕にも需要がありそうな内容もある。リスポーン地点の設定は僕も欲しかった。魔法陣で自分の命を削ってMPを込める時も、一々噴水広場から戻ってくるの面倒だったし。

 それとは別に、祭りでエニグマが言っていたイベントに関する要素も増えているようだ。エニグマからは土日と聞いていたけど、「8/17(土)より開催される」という表記から考えるに、期間があるタイプのイベントだろうか。

 不具合の修正の方は…なんかよく分からないけど、バグを直したって事かな。アビリティをキャンセルすると飛行出来るってどんなバグだったんだろう。


「あともう1件は…」



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お知らせ


8/12(月)のメンテナンスによる変更点

 ・称号「迷い人」で特殊マップへ侵入した場合に簡易的な案内を追加しました。

 ・称号「迷い人」の詳細を変更しました。


称号「迷い人」に関する情報はAIにより認識度が低いと判断された為、該当の称号を所持しているプレイヤーにのみメッセージが送られます。


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 なるほど? これもしかして僕が問い合わせ送ったからかな?

 …いや、方向音痴の人なんていっぱい居るだろうし、僕だけじゃないか。認識度が低いというのは、方向音痴なんて人に誇れる物でもないし皆黙ってるんだろう。わかるわかる。


 さて、変更されたとなれば確認してみよう。

 ステータス画面から称号の「迷い人」をタップし、詳細を開く。



──


『迷い人』

ある種の才能として本人の意思に関係なく迷う救いのない方向音痴。

マップ所持不可。

迷ったと判断される状況に陥った場合、その場から侵入可能な特殊マップへ50%の確率で侵入する。また、この効果は迷い続けた場合30分毎に発動する。


──



 うわ、思ってたより酷い称号だった。色々気になる事は多いけど、1つずつ考えていこう。

 まず「迷ったと判断される」というのが気になる。判断されるって、誰にだろうか。僕…というより「迷い人」を持っている人は監視されていて、その監視している人が迷ったと判断したら、だろうか。それかAI……AIの方が可能性ありそうだな。

 恐らくAIだろう。態々運営が人員を割いて監視するとかないだろう。増してやプレイヤーなんていつプレイするか分からないんだし。


 次に気になるのは特殊マップへ侵入する確率とクールタイム。50%って結構高い。しかも迷った瞬間に50%、それで侵入しなかったら30分後に50%、また侵入しなかったら30分後に50%…と迷い続ける限り延々と続く。

 50%で一方を引き続ける確率というのは、回数を重ねる毎に少なくなっていく。単純計算だと1回目は50%、2回目は25%、3回目は12.5%…と2分の1になっていく筈だ。確率の計算のやり方忘れてるからこれであってるか分からないけど。

 しかし逆に、迷っていないと特殊マップに侵入することもないというのが判明した。サスティクで侵入した、ずっと夜で時間加速設定が適用されていて骨や鎧が徘徊している特殊マップもリベンジしたいと思っていたが、街の構造を覚えたりすると侵入出来なくなるかもしれない。


「うーむ…」


 リベンジと迷わない事を天秤にかけたら、好奇心も多少あるが、リベンジの方が重かった。

 致し方なし、迷わない事は諦めよう。性別が変わった事と同じように受け入れた方が良い。その方が楽しくなりそうだし。


「じゃ、弓の練習に行こうかな。おいでうさ丸」


 イベントの前日譚クエストは1人でクリア出来る気がしないし、エニグマもどうせやるだろうしその時に僕も一緒にやれば良いや。メッセージだけ送っておこっと。


 して、弓の練習なのだ。

 昨日スキルオーブを買って『弓術』というスキルを取得して、訓練所の藁人形を相手に練習したり、モリ森で狼相手に使ってみたりと練習してスキルレベルを上げたが、命中率に関係するとかそういうアビリティは一切覚えなかった。

 スキルレベルは6、アビリティは最初からある『クイックアロー』と、レベル5で増えた『ポイズンアロー』の2つだけだ。

 クイックアローは矢の速度が上がり、威力も少し上がる。

 ポイズンアローは発動してから次に放つ矢に毒を付与するものだ。それだと鏃に毒を塗った矢の意味あるのか、と思っていたけど理由はクールタイムだった。毒の矢はクールタイムが無いけど、アビリティの方のポイズンアローに比べると毒が弱い。


「『ポイズンアロー』」


 ご飯を食べている間に気になった事が1つ。

 銃のゲームは頭に弾を当てると一撃で倒せたり、ダメージが上がる。頭が弱点だし、現実でも体と頭を撃ってどっちが致命傷に成り得るかって言ったら、まあ頭だろう。

 それと同じで弓矢もそういう判定があるのか、というもの。ついでにその場合に毒のダメージは上がるかも気になった。


 矢を番え、頭に藁人形の頭部分に当たるように狙いを定めて放つ。

 頭に当たったのを確認したら、パネルを操作してダメージログを眺める。現在進行形でダメージが10ずつ蓄積されている。昨日見た時とダメージ量は変わってないので毒は固定ダメージだ。

 ログを遡って矢自体のダメージを確認すると195。いつもよりかなり高いので、弱点の概念はしっかりあるようだ。


「矢も随分狙い通りに当てられるようになったなー…」


 藁人形に矢をペシペシ当てながら呟く。

 そしてここで脳裏をよぎる昨日の記憶。狼相手に弓を使って当たった矢の数はなんと0本! 最終的に木刀で殴り飛ばして斧でトドメを刺した。


 ……うん、動いてる相手に当てられるようにしたいな。クランハウスのホールにある受付で訓練所の追加コンテンツ買って、アイテム消費とデスペナルティをオフにして、エニグマとかアズマとかと戦えば実戦の練習になるかも。

 施設や施設の追加コンテンツを購入するのに必要なのは特殊なアイテムではなくお金なので、金額次第では僕でも買えるけど…お金使いたくないなぁ、エニグマが買ってくれればそれで良いんだけど。


「矢も勿体ないし、買うかは別として確認だけしよーっと」


 ウサギ達が訓練所に居ると外した矢が当たったりしそうで怖いし、庭も欲しい。

 なんなら訓練所をより快適にするために追加コンテンツ全部欲しい。まさに強欲。


 受付というからNPCが立っているというイメージがあるけど、ただのパネルだ。近付くと勝手に起動して様々なメニューが表示される。


「追加コンテンツはー…」


 メニューのうちの「設備のカスタム」という項目を開くと、「訓練所」と「保管庫」「庭」の項目が普通に表示されていて、その他の項目は薄く表示され、南京錠が閉まっているマークがある。

 アンロックされてない項目が少ないと思ったけど、そういえば購入者によって買える施設と買えない施設があるんだっけな。

 というか、庭買われてるじゃんね。さっき訓練所に行った時は転移先に庭は無かった筈だから、弓の練習をしている間に誰かが買ったのかな。

 何ができるか全く分からないので色々と見てみよう。


 まずアンロックされてない、僕が確認出来る施設は「錬金ラボ」と「プール」、「迷路」の3つ。

 ……プールは水泳スキルの影響だろうからまだ分かる。が、迷路って何だろう。称号も関係してくるのかな?

 錬金ラボは15万ソル、プールは7万、迷路は1万。迷路だけ安いな。気になるし買っておこう。

 ラボもプールも今は別に必要ないので、アンロックされている項目のカスタムを見てみる。


 訓練所のロックされているカスタムは「時間操作」「天候操作」「アイテム消費オフ」「デスペナルティオフ」「ダミー品質向上+1」「ダミー品質向上+2」「ダミー数増加」etc…と、めっちゃ多い。

 値段もカスタムによって変わる。天候操作は1万ソルだけど、アイテム消費オフとデスペナルティオフは10万ソル。時間操作は天候操作と同じようなものだと思うのだが、8万5000ソルと結構高めだ。


「ん〜…」


 僕の全財産は16万ソル程度。ポーションの需要が高いせいでかなり儲かっているのだが、それでも欲しいカスタムは買えて1つだけだ。

 アイテム消費オフもデスペナルティオフもとっっっっっても魅力的なので是非とも欲しいけど、その両方買うには4万ソルほど足りない。

 今どちらかを買うにも、どちらを買うか迷ってしまうな…。


「魔法陣を使いたいからアイテム消費オフ…いやでも、より実戦的な練習をするなら人と戦った方が良いし、デスペナルティオフが…」


 実に悩ましい。エニグマかアズマに頼んだら片方買ってくれたりしないだろうか。


「聞くだけ聞いてみよ」


 メッセージを送ってみると直ぐにエニグマから返事が帰ってくる。今行くとの事なので、これは期待して良いかもしれない。


 エニグマを待っている時間は暇なので庭のカスタムを覗いてみる。

 今のところ全ての項目がロックされている。

 カスタムの種類は「土地拡張+1」「土地拡張+2」「土地拡張+3」……と、土地拡張が+10まで続いている。他には「畑追加+1」「畑追加+2」と畑追加が+5まで、訓練所にもあった「時間操作」や「天候操作」もあるし、「花畑追加」や「ツリーハウス追加」、「池追加」etc…。項目の数で言えば訓練所より多い。ダブルスコアレベル。

 なんと言っても土地拡張と畑追加が多い。この2種類だけで15枠使ってるんだからそりゃ多いよね、って感じだ。

 値段は土地拡張が+1で5000ソル、そこから5000ソルずつ増えて+10で5万ソル、土地拡張を全て買うとなんと…27万5000ソル。畑追加は+1が1万ソルでそこから1万ソルずつ増える。時間操作と天候操作は訓練所と同じだ。ツリーハウス追加は5万、池追加は10万…と、まあ庭も庭でカスタムがかなり高い。


「お金無さすぎ」


 こういうカタログとか見るの向いてないとつくづく思う。大体全部欲しくなってしまう。

 庭のイメージは逢魔の空間に近いだろうか。師匠の家の周りに色んな木とか植物が生えているし。キノコとかも生えてたな。


「金貸してって何したんだよお前」


 庭のカスタムをザーッとスクロールしながら眺めているとエニグマの声が背後から聞こえてくる。


「いや、訓練所のカスタム買いたくてさ。ってあれ、アズマは?」


 アズマにもメッセージを送ったけど返事が来ないので、てっきりエニグマと一緒に行動しててエニグマがアズマの分も含めて返事してたのかと。


「アズマはソロダンジョンチャレンジだ。つか訓練所のカスタム? どれだよ」


「アイテム消費オフかデスペナルティオフ」


「なら安い方で…ってどっちも同じじゃねぇか」


「全部買ってくれても良いよ」


「そんな金ねぇよ」


 それは残念。しかしこれはお金があれば買ってくれるという事だろうし、期待しておこう。

 受付パネルの前をエニグマに譲るとパネルが再起動し、エニグマがパネルを操作してアイテム消費オフのカスタムを購入する。残りのデスペナルティオフのカスタムは僕が買おう。


「ほらよ。紛らわしい事するなよ、詐欺にでも引っ掛かったと思うだろ」


 なんか、エニグマの僕に対する信用低くない?


「ん、何だこれ、迷路なんてあったか?」


「迷路はさっき買ったやつ」


「需要あるか?」


「さあ?」


 別に施設の数に上限はないみたいだから気まぐれで買ったけど、1回行って終わりな気がする。何か報酬があるなら別だろうけど、流石にないだろうし。

 それはそうと、訓練所も庭も欲しいカスタムが多いし、金策を考えなければならない。売る先はあるんだし、ポーションとか星水を大量に作って売れば……って、どれだけ作ればいいんだろうか…。

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