僕と親友

梶野七樺

第1話 親友のお葬式

 僕の親友の青井瑛太が亡くなった。

人通りが全くなく、誰も住んでいなさそうな古い家が並ぶ道を、塾から1人で通っている時に、何者かに包丁で刺されて殺された。


 今日は殺された瑛太のお葬式だ。

彼のことを慕っていた多くの人が参列して、彼との突然の別れを悲しんでいる。

僕も例外ではなく、彼とはずっと仲の良い親友だったので、僕達が通っている高校の制服を着て参列している。

式が滞りなく終わり、霊柩車に瑛太が入った棺を乗せることになった。僕は瑛太の遺影を持って、棺が出た後にゆっくりと外に出る。生前の彼は太陽が似合うような人だったのに、今日は雨が降りそうな天気だった。

僕は、1つも涙も出さず無表情で彼が入っている棺を見る。棺の近くには多くの人が集まって泣いている。その中で僕もよく知っていて、その場に崩れそうに泣いている、瑛太のお母さん(おばさん)と、それを支えようとしている僕と瑛太といつも行動していた、高校になってからの友達の秋田翔を見つける。翔は僕の目線に気づくと、おばさんを近くの人に頼んで、僕の方にやってくる。

『なぁ、お前大丈夫か?突然親友が亡くなって』

『あぁ、大丈夫だ。だが、まだ状況が飲み込めてなくてな…。』

『だろうな、俺もだ。そのせいかあの人達みたいには泣けないんだ。』

『奇遇だな。僕もだ。』

僕と翔は、泣いている人を無表情で眺める。

『なぁ、まだ捕まってないんだろ?』

『あぁ。犯人が一切証拠を残していないらしいからな。』

『やっぱりな…』

翔はその言葉を聞いてがっかりしたような反応をする。そして、

『早く捕まるといいな』 

と僕にしか聞こえない声で翔が呟く。

丁度、その時霊柩車の扉が閉じ、翔は僕に向かって『また後でな』と言って離れていった。

僕はその翔の後ろ姿を見ながら、瑛太の遺影を持っている手に力を込めた。




 

 

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