勇者パーティを追放された剣士の俺が魔法適性カンストしていた件〜今まで培ってきた剣技と合わせて史上最強の魔法剣士になる。今更戻って来いと言われてももう遅い〜

鳴子

第1話 追放

「アラン・ギフテッド。お前はもういらん。パーティから出ていけ」

「は……?」


 ダンジョンから帰ってきてすぐ、チームのリーダーであるアイギスから耳を疑う様な事を言われた。


「……冗談だよな?」

「はぁ……。そう思うか?」

「そうですよ。今まであなたがどれだけパーティに迷惑をかけていたか考えたことがあるんですか!」


 アイギスが呆れた様に息をついた後、言葉を付け足す様にパーティの回復担当であるソフィアが言葉を続けた。


 俺は特段迷惑をかけていたつもりはない。

 同じ剣士であるアイギスに負けない様に剣技も磨き上げて、その上、その他の雑用も全てこなしてきた。

 追放される理由がわからない。


「そんなんだからいつまで経っても強くないのよ」


 訳がわからずじっと考えていると、もう一人のパーティメンバーで、攻撃魔法を担当しているサーラが口を挟んできた。


「俺はちゃんとこのパーティの役に立てる様に働いていたつもりだ。剣技ではアイギスに負けていたとしても立ち回り方を工夫して——」

「そんな言い訳なんて良いんだよ!」


 アイギスは言葉を遮る様に、大きな声を重ねてきた。

 俺には発言権すら無いのか。今の反応を見ると、そう思ってしまう。


「お前は今足手まといになっているんだよ。実際に今日のダンジョンだって、お前が勝手な行動をしなかったらもっと楽に進めたんだ」

「それは……!」


 アイギスが言っているのは、俺がサーラを庇った時だろう。


 ダンジョンでの戦闘中、サーラが突然走り出したのだ。その理由も、魔法は近くで当てた方が威力が出るからという意味がわからない理由で。


 俺は攻撃力が一番あるサーラを失う訳には行かないと、サーラのフォローに回ったのだ。

 そのせいでソフィアが攻撃を喰らってしまった。


「確かに俺の失態もあったかもしれない。でもそれはサーラが——」

「あったかもじゃ無いわよ。全部あんたのせいなの! わかる?」


 サーラは私は何も知りませんよ、と、そんな雰囲気を出して、問い詰めてくる。


 元はと言えばお前が勝手に動いたからだろ!

 そう言いそうになったがギリギリのところで言葉を飲み込む。

 本当のことだったとしても、言い訳だと返されるだけだ。

 黙っていると、立て続けに俺を責める言葉が飛んでくる。


「それに次からは誰も言ったことない未踏の地なんだよ。お前みたいな奴がいると勝てる訳がない」


 俺たちのパーティは最近、3パーティ目の快挙である、ダンジョンの90階層突破したのである。


 ダンジョンとはこの世に無数にあるとされている、地下にある洞窟の様なものだ。

(それぞれのダンジョンによって中の様子は様々であるが)


 そして、そのダンジョンを攻略している人達の総称を攻略者と呼ばれる。


 俺たちが、現在攻略している『獄炎のダンジョン』は90階層以降の最下層を突破したパーティは居ない為、攻略者の間では勇者パーティと持て囃され、周りからの期待の声も大きくなっている。


 1から30階層までが上層、31から60階層までが中層、61から90階層までが下層、それより下が最下層と呼ばれている。


 そんな状況も相まって、一番能力が低い俺がいらないという話になったのだろう。



「……わかった。このパーティを抜ける」



 これ以上何を言っても無駄だろうと思い、要求を飲んだ。

 これ以上無理にいても、居心地が悪いだけだ。


「それで良いんだよ。お前が抜けたらその枠には"剣聖"と呼ばれるほどの剣の使い手が入る予定だからな。抜けてもらわないと困るしな」


 なるほど。そういうことか。

 そりゃあ、今入っている奴より剣の才能がある奴が見つかったら、そいつを入れるか。


「そうか。それはよかったな。それじゃあ今までお世話になったよ」


 俺は最後に一言、出来るだけ軽くそう告げた。

 酷い別れだとは思っていても、3年も一緒に戦ってきた仲間だからな。


 しかしそんな俺の言葉を無視して


「これで、他のパーティよりも早く100階層に行けますね!」

「これから楽しみだわ」


 と、そう話す声が聞こえた。元から俺がいなかったかの様に。


(ふっ、元から居場所はなかったのかもな)


 少しだけ残っていた未練も完全に途絶え、勇者パーティから離れた。


 その後、アランがいなくなった勇者パーティがどん底に落ちていくなど誰一人として思っていなかった……。

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