第46話 ドッペルゲンガー

 まずは結論から。

 午後五時の公園に、梨乃ちゃんは現れませんでした。

 そう都合よくはいかないか~。


「おい、梨乃の知り合いってのは、あんたらか?」


 おっと、誰か来ましたね。

 この顔は忘れもしません、わたしの天敵です。


 出会っていきなり胸ぐらを掴まれて、ネック・ハンギング・ツリーみたいな技をかけられましたから。


 まっ、お兄ちゃんは初対面だけど。

 とっても顔が似ているので、驚きで声が震えています。

「お、おい、こいつは俺のドッペルゲンガーか?」

「こいつとは失礼だな。年長者に向かって」

「あんたいくつだ?」

「俺は今年で三十五歳だが」

「なんだ、同い年じゃないか。えらく老けた顔だな」

「失礼なやっちゃな、このモヤシ野郎が」


 えっ、うわ~、たしかに梨乃ちゃん十六歳だから、パパさんが十九歳のときに生まれた娘さんとすれば、お兄ちゃんとパパさんって同い年とか、あり得るんだ。

 中年のおじさんとか言っちゃってごめんなさい。

 そしてがんばれ、お兄ちゃん!


 まずは権蔵ごんぞうパパの正体を、ごにょごにょ、っと。


「ん、え、なにッ!? 梨乃さんの、お父さん……だと?」

 表情が凍り付きました。


「気安くお父さんとか呼ぶなっつーの」

「す、すみません、パパさん。とんだご無礼を」

「パパさんてッ、気持ち悪りぃから、権蔵と呼べ。そして、あんたが神場じんば直木なおきでええのか? どこの馬の骨とも知れんやっちゃが、その小僧を連れて帰らんと、少々困ったことになっとるんでな」

「いかにも、俺が神場直木だが」

 わたしは神場じんばまいです。


「ふ~む。ひとりで来て欲しいけど、たぶんふたりで来る――か。よし、細けぇことは抜きだ。今からウチに来てくれ」


 おっ、やったー。

 梨乃ちゃん家まで、車で移動だ~。

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