第38話 約束

 ディーネちゃんが、ごね始めました。


「わたくしの手番なのですから、たとえいっときでも、直木さまとふたりだけで混浴デートをさせていただきませんと」

「却下します」

「私は、べつにかまわんが」

「計算では死人が出ましたので、お気を付けて」


 朝から物騒ですね。


 なお昨晩は、お兄ちゃんのお布団に謎のフォースフィールドを張ることで、婚約者ウォーズを回避できました。

 ティノちゃんの技術にたよると、またティノちゃんだけ忍び込むのでは?

 って疑われていましたが、あの『裸でベッドに忍び込み事件』でトラウマを学びましたから、今回は、わたしと同じお布団で、朝まで静かに眠ってくれました。


 ディーネちゃんが、もう一度ごねます。


「では、わたくしの温泉デートは、どうしてくれますの?」

「外でふつうにデートを楽しめばよくないですか? それともクラゲ星人には、人間のふつうのデートは理解できませんか?」

「んなっ!」

「ディーネ殿のお気持ちも全くわからんではないが、たとえば、ナオキの希望を聞いてからプランを立てるのも、婚約者の甲斐性かいしようではないかな?」


 お兄ちゃん、どうなの?


「ん、ああ。もとより『温泉街を見てまわるコースなら』という約束だからな。俺としては夕方までデートしてもらえると格好も付くのだが、受けてくれるか?」


 ディーネちゃん、まぶしすぎる笑顔で。

「ええ、喜んでお受けいたしますわっ!」

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